普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

時を結ぶ歌、未来へ Liella! 4th LoveLive Tour ~brand new Sparkle~ <5yncri5e! edition> DAY2全曲感想

今回も会場になった武蔵野の森総合スポーツプラザ

 2023年9月10日 (日)、ラブライブ! スーパースター!! Liella! 4th LoveLive! Tour ~brand new Sparkle~ <5yncri5e! edition>』 (東京公演) DAY2に参加してきました。Liella! も早くも4thライブ。そしてついに今回3期生を迎え、Liella! の全メンバーにあたる11人が揃い踏みしました。さらに、新要素としてユニットに分かれたパフォーマンスが行われ、会場ごとに3つのユニットが見せ方を競い合いました。

 時の流れとともに成長を披露してきたLiella! の最新ライブには、どんな想いが込められていたのでしょうか?

前回、3rdライブの感想

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1. 3つのユニット

 今回のライブ現地参加に先立ち、8月20日 (日) の千葉公演 <KALEIDOSCORE edition > DAY2および8月26日 (土) の愛知公演 <CatChu! edition> DAY1を配信で視聴しました。4thライブは、フルメンバーが揃い、ついに伝統のミニユニットを組んだLiella! の初めてのミニユニットライブを兼ねているので、各公演ここだけは大きく変わることになります。

 トップバッターとなったKALEIDOSCOREは、可可・恋・マルガレーテの3人ユニットです。ライブでは『ベロア』『不可視なブルー』を披露しました。曲がリリースされた時点で、「あのマルガレーテがラブソングを歌うのか」と驚きを隠せませんでしたが、やはり実力は文句なしでした。曲名に違わず、衣装にもベロアの生地が使われているとのことでした。私のように服飾に詳しくなく、ここでベロアという言葉の意味を学んだ人も少なくないでしょう。『不可視なブルー』は、青山さんが一人でハモりを担当し、ちょうど先輩ユニットにあたるQU4RTZの指出毬亜さんのように、歌唱力の高さを生かしてユニットを支えていました。

 この3人は美人で歌が上手いだけでなく、「笑い」でも右に出るものはいないほどで、ボケ倒す恋役・青山なぎささんとマルガレーテ役・結那さん、そして天然発言を連発する可可役・LiyuuさんによるカオスなMCが展開されていました。青山さんが目からハンドマイクを出したという結那さんの支離滅裂な夢の話が印象に残りました。涙のたとえにしては物が大きすぎます。

 愛知で登板した2番手CatChu! は、かのん・すみれ・メイの3人ユニットです。1曲目の『影遊び』は度肝を抜きました。かっこいいラテンロックで、すみれ役・ペイトン尚未さんとメイ役・薮島朱音さんの落ち着いた歌声に、かのん役・伊達さゆりさんの歌声がセクシーな香りを添えるような味のあるパフォーマンスでした。続く『オルタネイト』も、曲名通り代わる代わる3人の魅力を見せつけてくれました。

 この曲中からMCにかけてペイトンさんの衣装の袖が外れ、綺麗な腕が露わになっていたのが脳裏に焼き付いています。

 ユニットセクションで共通して披露されたのが、『What a Wonderful Dream!!』のアレンジ版です。どちらも原曲・ユニット楽曲の雰囲気のいずれとも異なる曲調にアレンジされ、新鮮味がありました。KALEIDOSCOREはキラキラしたサウンドに、CatChu! はロックな曲調でありながらどこか可愛い感じにアレンジしていました。

 さて、これらを踏まえて、史上初の5人ユニット、5yncri5e! はどんなパフォーマンスを披露するのか? 期待に胸を膨らませ、武蔵野の森総合スポーツプラザへ足を運びました。

 

2. From the Passion Island

神津島空港からの新中央航空CUK304便

 ライブ当日、先ず私が向かったのは会場のすぐ近くにある調布飛行場でした。個人用やチャーター機などのほか、旅客機は東京島嶼部専門という変わった空港です。ここには、飛行機を見ながら食事が楽しめる『プロペラカフェ』があります。空港敷地の検問の向こう側というとやや物々しいですが、検問の職員も怖くなく、名前と連絡先を書くとにこやかに通してくれました。

 パスタを頼み、食後にコーヒーを飲んでいると、神津島空港発の新中央航空CUK304便がやってきました。調布に発着する島からの飛行機は、すべて19人乗りの小さなプロペラ機です。島とは反対側の国分寺方面で旋回し、短い滑走路で器用に止まっていました。『フライトレーダー24』を見ると、鎌倉上空からよみうりランドの上空を通ってきたそうです。

 東京公演DAY1には、Sunny Passion (以下、サニパ) の吉武千颯さん・結木ゆなさんが来場されていたそうです。このライブでサニパに関連する部分のことは、これまでの公演の配信で知っていましたが、その内容についても後述します。

 飛行場から武蔵野の森公園を通って会場を目指しました。暑い中、少年たちが野球の試合をしていました。このエリアには、サッカーJリーグラブライブ! シリーズのコラボ試合も行われた味の素スタジアムもあり、東京2020オリンピック・パラリンピック (以下、五輪) の会場の1つにもなった、子どもからプロまでスポーツに打ち込む人々のための場所として知られています。原宿から会場に来ていたキッチンカー用のゴミ箱が、五輪に向けて東京都が購入したものだったので驚きました。Liella! が目指すのは、五輪のメイン会場だった国立競技場です。

 武蔵野の森総合スポーツプラザ、通称「ムサプラ」(今まで聞いたこともありませんでしたが……) に来るのはこれで4回目です。初めて来たGuilty Kissの1stライブ以来のアリーナ席を引き当てました。向かった自分の座席は、なんと前から8列目。ステージも大画面も目の前で、見上げるほどの位置でした。後ろを見ると客席がずらりと並ぶ、壮観な場所でした。

 早めに入場したので告知映像を見ながら待ちました (みらくらぱーく! で沸き上がる会場には笑いました)。

 

3. 11人のスタート

 今回も、開演前に曲がかかりました。3rdライブ最後の曲である『TO BE CONTINUED』でした。客席のコールはだんだん1つになり、準備は万端の様相でした。

 星が流れていく演出で毎回泣いてしまうオープニング映像に続いて、Liella! が登場しました。

 これは千葉の配信の時に驚いていたので、会場で驚くことはなかったのですが、1曲目から11人全員がパフォーマンスをする『Jump Into the New World』でライブが幕を開けました。5人のパフォーマンスの後で2期生4人が加わったファンミーティングや、開始前に「入団式」を執り行ったニジガク4thライブとは異なり、既に3期生の2人も加入しているというスタンスでした。この曲の歌い出しは3期生の2人で、新時代の幕開けに相応しいスタートとなりました。

 続いて『スター宣言』です。2曲目が『スター宣言』なのは3rdライブと共通しており、2つのライブの連続性を感じます。今回は、3期生も加わった11人での歌唱です。曲が始まるタイミングの伊達さんの「宣言」が、今回も印象的でした。

 この2曲を終え、自己紹介のMCに入ります。3期生には、それぞれの会場限定のコール&レスポンスが用意されていました。これは、通常のラブライブ! シリーズのコーレスが本編の台詞などを出典とすることが多い中で、2人にはまだ本編が存在していないからだと思われます。3期開始までの暫定措置というわけです。ツアーファイナルの今回はそれだけでなく、2期生以上のコーレスも特殊なものになっているメンバーがいました。一例として、四季の「私はメイが好き」が、今回は「私はメイと、5yncri5e! と、Liella! と、あなたが好き」に変化しており、会場がどよめきました (表現上、「あなたが好き。あなたは?」となり、四季役・大熊和奏さんは一瞬混乱していました)。四季のコーレスなのにメイにしか「好き」を表明できない私たちが、今回は四季に対して「Me too!」を返したのです。

 最後に挨拶した新メンバーの鬼塚冬毬を演じる新キャスト・坂倉花さんが「120%、いや200%の力で頑張る」と言ったのを踏まえ、千砂都役・岬なこさんが突然目を大きく見開きました。ステージで顔芸をするスクールアイドルはこれに始まった話ではありませんが、他のキャストも次々に目を「200%」に見開き、ステージはカオスになりました。

 ギャグのような顔芸はする必要がありませんが、私たちもそれくらい目を見開いて見たいライブが、既に始まっていました。

 1期生と3期生が退場し、2期生だけで『Blooming Dance! Dance!』が始まりました。この曲は2期のBD特典曲で、ナンバリングライブでは初めて披露された特典曲ということになります。ステージ上の映像演出を見て、あることに気づきました。3rdライブで披露されたアニメ2期1話挿入歌『Welcome to 僕らのセカイ』と対応する演出となっていたのです。特典曲なので聴き込む機会はあまりありませんでしたが、よく聴くと曲もよく似ています。「スリー・ツー・ワン」とカウントダウンするところが「アン・ドゥ・トロワ」とカウントアップになっているなど、対応する要素も数多く見つけられます。2年生になり、2期生も独り立ちしたのを感じました。

 そこに1期生が合流し、『キラーキューン☆』がかかりました。9人はトロッコに乗り込んでアリーナを回ります。私のいたほうに、真っ先に大熊さん*1たちが乗ったトロッコがやってきました。ちょうどトロッコに乗るところまで見える位置だったので、どちらに来るのだろうとどきどきが止まりませんでした。これが、まさに「もうすぐ会える震えるぜ」という心情です。もっとも、後で確認したらトロッコが通れる通路は私の4~5席隣に1つしかありませんでしたが。曲の位置づけとしては、直前に「1期生が2期生を迎えた楽曲のアンサーソング」があり、このセクションの後には3期生が登場する幕間アニメが挟まることからすると、3期生との対面を心待ちにしている9人の歌という解釈でよいかと思います。発売時期も、3期生キャストの坂倉さんがお披露目する1ヶ月前でした。メンバーたちのお喋りを題材にしたラップと「キュンキューン」の気持ちを一緒に歌えるサビの組み合わせで、序盤において特に印象に残る曲です。

 そのまま、同じシングルの『MIRACLE NEW STORY』に続きました。センターステージで円形になって踊る9人に向けて私たち観客が発した声は、『What a Wonderful Radio!!』(以下、『なこなぎラジオ』) で青山さんが考案したコールでした。千葉および愛知の配信では、この声はそれほど大きく聞こえなかった気がします。ツアーファイナルがなせる一体感でしょうか。この曲は、『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル2 MIRACLE LIVE』(以下、『スクフェス2』) のテーマソングです。ラブライブ! 声優の半分はこのゲームでラブライブ! を知った……とさえ思われる名作ゲームアプリ『スクフェス』と入れ替わる形でリリースされたリズムゲームですが、その新たな時代の担い手がLiella! というわけです。「終わるということは始まるものもある」という、終盤のMCは、『スクフェス』のことも指しているようです。

 

4. スクールアイドルのいろは

 今回の幕間映像に先立ち、その前日譚ともいえるミニアニメがYouTubeに公開されていました。こちらは、歌を通して「心を結ぶ」ということに関してメンバーたちが考える内容でした。

 それに続くミニアニメは、ライブのセットリストと連動しており、ライブの「補助線」として機能していました。3期生にはまだLiella! メンバーとしてのストーリーがないので、ミニアニメに従ってライブが進んでいきます。ちなみに (3会場×2DAYS) でそれぞれユニットとソロの曲目が異なるため、セットリストが6パターンありますが、ミニアニメも一部が6パターンに分岐していました。

 最初のパートでは、3期生2人のところに「オラオラ系」の格好で現れた可可・メイ・四季が、スクールアイドルのいろはを教えていました。グループ活動の楽しさを説きつつも、「ソロ活動も良い」と一見一貫しないことを言います。私が感動したのは可可の「ソロで活躍するスクールアイドルもたくさんいマス」という発言でした。直接繋がる時系列ではありませんが、『スクスタ』第2章ではせつ菜が「ソロは珍しい」とはっきり発言していたからです。ソロの可能性を追求したスクールアイドルによって、その可能性が拓けたということです。もちろん、マルガレーテもソロのスクールアイドルとして、ラブライブ! 都大会準優勝まで上り詰めましたが、その場で観客との向き合い方をかのんに非難されてしまったこともあり、スクールアイドルとして最高のソロステージがどんなものなのか理解しているわけではなさそうです。DAY1では、そんなマルガレーテを筆頭に5人のメンバーがソロ曲を披露しましたが、DAY2は冬毬の姉、夏美から5人のソロパフォーマンスが行われました。

 『Eyeをちょうだい』は、懐メロのような、どちらかというと擬古的ポップといった要素のある曲です。ライブで見つけたこの曲の新たな楽しさは、「ちょうだい」に「ちょうだい!」を返せるようになっていたところです。何もうまく行かなくても、ずっと何かを欲しがり、求め続けていた夏美が自分の気持ちに正直になって歌っているから、私たちも欲望というなかなか言えない自分たちの気持ちを言葉にして、心を結ぶことができるのです。トップバッターに相応しいクオリティのパフォーマンスだったと思います。

センターステージに向かった夏美役・絵森彩さんに次いでメインステージ上方に現れたのは、メイ役の薮島さんでした。ソロ曲『茜心』の情熱的パフォーマンスで魅せていました。

 もちろん、『茜心』は『茜心』単体でかっこいいのですが、この曲の魅力を単独で語ることはできません。曲が終わったとき、薮島さんの視線は、センターステージに現れた大熊さんと見つめ合っていました。メイの幼馴染 (自称)、四季の『ガラスボールリジェクション』です。曲が始まると、センターステージの周囲に地面に垂直のサーチライトが伸びて、大熊さんを取り囲みました。居心地の良い世界を抜け出すことへの悩みや、真紅の光に導かれて掴んだ自由への高揚感を、ダンスに込めていました。ダンスによる演技力では、大熊さんはピカイチだと思います。爽やかな表情もあり、演技中は誰よりもかっこいいところを見せてくれます。

 さて、『茜心』と『ガラスボールリジェクション』には、曲の一部が共通しているところがある……と、発売時点から話題となっていました。この部分についても、お互いがステージに立つライブではよりはっきりと意識することができました。『茜心』の当該パートでは片手のブレードを白に、『ガラスボールリジェクション』の当該パートでは赤に変えて応援しました。

 メイと四季が見つめあう関係性なら、違う形の関係性もあります。大熊さんのパフォーマンスが終わった後、岬さんが、なんと会場最後方からトロッコで登場しました。『君を想う花になる』は、千砂都の深い愛情を歌った歌で、岬さんの透き通った歌声に乗ってその気持ちが届きました。その愛情が向けられているのは、千砂都の幼馴染であるかのんです。センターステージにやってきた岬さんが曲の終盤を歌っていると、かのんが、すなわち伊達さんが上がってきました。2人は歌の終わりまで、背中合わせになっていました。メインステージを向いて佇む伊達さんの背中に、歌い終わった岬さんの手が触れました。

 思えば、1stライブのときもそうでした。アニメ1期の再現だったこのライブでは、背中を押されたかのんが『私のSymphony』を独唱しました。2期でも、留学案件を前に迷うかのんを激励したのは千砂都でした。千砂都は、たとえ顔の見えない距離にいたとしても、何度でもかのんの背中を押すということを強く意識しました。これまでの2公演では、岬さんの手は伊達さんの背中に触れていなかったそうで、これは特別なパフォーマンスだったようです。

 背中を押された伊達さんが『Free Flight』を歌い始めました。私は歌い出しから衝撃を受けました。伊達さんの歌声の、心をぐっと掴んで震わせるような部分は変わらずに、安定感と透明感がうんと増していたのです。1stライブでは、毎週ライブを繰り返して経験は増えながらも、はっきり言えば消耗している部分があり、本人も挫折感を味わっていたとのことでした。3rdライブでも、どんどん遠くへ行ってしまうかのんのことで思い悩んでいましたが、そんな迷いが晴れたような、本当に晴れ晴れとした歌声でした。ツアー公演を回っても、もうダメージは蓄積していない、確かな実力アップも感じました。1stや2ndに続いて、伊達さんの独唱を聞けて良かったと思います。

 

5. まわる5yncri5e!

 再び幕間アニメです。今度はマルガレーテと冬毬のもとに、恋・すみれ・夏美が現れました。3人にマルガレーテが聞きたかったのは、何のためにスクールアイドルを頑張るのかでした。3人にはそれぞれ、学校への貢献、名声や富という別々の願望がありながら、ひとつの目標を目指して頑張っているという、これまでの『ラブライブ! スーパースター!!』の物語を要約するような答えが出されました。マルガレーテと冬毬も、私たちが名前を呼ぶ声 (本当に観客参加型で声を出しました) を聞いてその目標を意識するようになりました。スクールアイドルはメンバーそれぞれの夢の重ね合わせで、重ね方が変われば表現の仕方も変わるというのが面白いところです。ここから、冒頭でも紹介したユニットの出番です。

 東京公演では、千砂都・きな子・四季・夏美・冬毬による史上初の5人ユニット、5yncri5e! が登場しました。メインステージに現れたのは、チェック柄の衣装を着た5人。それぞれのメンバーカラーがあしらわれたビビッドなデザインです。ユニット曲は『A Little Love』『Dancing Raspberry』の2曲です。フォーメーションダンスは、5人というまとまった人数がいるからこそ輝く要素です。5人とも完璧に揃っていて、ときに炎のような、ときに潮流のような、人の目を釘付けにして離さないエネルギーを発していました。

 中でも、私はリーダーとしての貫禄を手に入れた岬さんと、ダンス力が飛び抜けている大熊さんに目を奪われていました。大熊さんはソロのダンスもそうでしたが、必死そうに見える激しい表現を、爽やかな表情で見せつけてきます。そして、そんな2人に全く引けを取らずに追随するのが坂倉さんでした。実は、最初の『Jump Into the New World』もそうでしたが、周りを見ると思いの外冬毬のメンバーカラーの青を振っている人が多かったのです。公式のブレードでこの色の固定ができないという不具合もものともしませんでした*2。ご祝儀の分を差し引いても、もう既にみんなに推される「アイドル」という座を射止めています。

 MCでは大熊さんが絵森さんたちに水を持ってきて、『A Little Love』の「あげるよ」をセルフパロディし、笑いを誘っていました。印象的な衣装は、いつものように回りながら観客に見せることになったのですが、メンバー曰く「回りながら回る」という変わったことをしていました。正確な表現をするなら、「センターステージ上で『公転』しながら『自転』する」ということになります。5yncri5e!らしいダイナミックな表現です。

 KALEIDOSCOREとCatChu! がやっていたように、5yncri5e! もユニット曲に続いて『What a Wonderful Dream!!』を披露しました。K-POPスター風味の演出だったユニット曲とはまた違う、重低音の響くダンスミュージックになりました。ボリュームと疾走感を兼ね備えた音楽が、5人のダンスとマッチしていました。もともと同じ5人曲ではあるのですが、見せ方でこれほどまでに変わるものかと驚きました。

 

6. 始まりと軌跡

 幕間アニメは終盤に入ります。これまでに出てきていないかのんときな子が、これからスクールアイドルを始める2人を前に、自分たちのスクールアイドルとしての始まりを振り返りました。マルガレーテと冬毬が自分たちの始まりの瞬間を意識したとき、部長である千砂都が見せたのは、これまでのLiella! の軌跡でした。「クーカー」と名乗っていた2人による『Tiny Stars』、5人で勝負に出た『Starlight Prologue』、6人で再スタートを誓った『Go! リスタート』、そして9人で辿り着いた『未来の音が聴こえる』……。11人の物語は、これに続きます。

 ライブの本編もそれに呼応して、Liella! のこれまでを振り返るような流れになりました。ただし、既存曲ばかりを使うわけではありません。幕間アニメのラストで1期生が「昔のように5人で歌う」という流れになり、おもむろに伊達さんが歌い出したのは『Hoshizora Monologue』でした。1期生4人がそれに続きます。それぞれのソロパートを聞かせる構成や、何よりタイトルからよくわかるとおり、この曲は『Starlight Prologue』の「影」になっています。あのとき未来への希望を歌ったのとは相反する不安や、この曲を歌って都大会優勝に届かなかった悔しさも含めた歌です。『Starlight Prologue』に心の底から憧れていた2期生たちも知らなかった、1期生の心の内がバラードになりました。袖で聴いていた2期生たちも最後はステージの左右から現れ、9人で手を繋ぎました。言葉には乗り切らない想いを乗せた歌が、9人を、そして私たちを結びました。

 2期生にとっては、「なんでもできそうなあの子も いつも笑い絶やさないあの子も 迷いながら 戸惑いながら きっと夢をみてる」。

 1期生にとっては、「『怖いよ』と言える今 怖いものなんてない」。

 それぞれの想いを交換しあう姿に、「心を結ぶ歌」を見ました。

 そんな9人は、Liyuuさんを中心に並んでいました。ステージに灯ったライトは、黄色と紫色でした。今やLiella! にも近い色のメンバーがいますが、この光が意味しているものは違います。可可が日本に来るきっかけとなった、サニパのカラーです。9人は、『Including you』で「朝」や「夜」、「情熱」といった言葉を歌い上げました。順当に読めば、これはラブライブ! の舞台から去って行ったサニパに宛てた曲なのですが、私はこの歌から、それ以上のものを感じ取っていました。可可にサニパがあるように、皆それぞれの「きっかけ」となる人やものを心に持っています。それは、かのんにとっては並外れた情熱で自分を誘った可可であり、千砂都にとっては強さを教えてくれたかのんです。恋にとっては、スクールアイドルの時代が始まる前から学校のために歌い、未来の若者たちに心を結ぶ場所を遺した母・花が、間違いなくそれにあたります。すみれのように、自ら野望を抱いてスクールアイドルに接近した人もいますが、そうした人が変わっていくにも何かきっかけがありました。それは2期生や3期生も同じです。3期生の始まりの瞬間である今だからこそ、1期生や2期生にとっても始まりを振り返り、きっかけに感謝するタイミングだったのだと思います。

 始まりや胸に秘めた心情を歌にした後、9人のLiella! が歌ったのが『未来の音が聴こえる』でした。前年度のLiella! がラブライブ! 優勝を果たした曲であり、ここがLiella! の現在地点です。3rdライブで披露されたとき、私はこの曲のことがまだわからない、と書きました。そうやって、すこし「未来」に解釈を保留したのですが、4thライブの終盤にこの曲を持ってきたことで、ようやくその意味がわかり始めました。このライブでは、直前の2曲が、過去や始まりを胸に抱いて今がある、という内容であり、そこから「未来」にむけて展望が開けていく、という位置づけにされています。その景色を、2期生までのメンバーたち9人は確かに2期12話で見ました。しかし、それを再現した3rdライブでキャスト9人が見た景色は、それと同じだったでしょうか? 確か、ベルーナドームでの千穐楽では国立競技場 (劇中では神宮競技場) と同じオープンな会場だったことで、少しは近づくことができたかもしれない、というような表現にとどめられていたと記憶しています。あの55分を要したMCでは、大熊さんや伊達さんをはじめ、メンバーの背中が遠くに見えた、追いかけるのに必死だったと語っていたと思います。もちろん、私から見ればその時その場所ではあらゆるパフォーマンスが最高に見えますが、それから半年が経てば前より成長していることもわかるものです。ここでは、「今」から「未来」を展望する、その音が聴こえる瞬間が、少し遅れてキャストにも訪れたのではないかと思います。

 この後に挟まった短いMCでは、岬さんが大熊さんの『ガラスボールリジェクション』を、青山さんが薮島さんの『茜心』を称賛していました。二組はアニメ内での千砂都と四季、恋とメイというダンスと作曲での「師弟関係」とも対応しており、その点でも嬉しくなりました。

 メンバーからキャストへボールが渡ったこのとき、9人がようやく披露したのが『Second Sparkle』でした。ライブタイトルとも繋がる曲名ですが、かなり終盤での披露となりました。こちらも、先行披露だった3rd千穐楽からは格段に完成度が上がっていました。このセクションは、あえて3rdライブを彷彿とさせる流れとすることで、キャストの成長を印象づけていたのだと思います。

 その締めくくりが、Liella! がずっと大切にしてきた曲『私のSymphony』でした。後方から結那さんと坂倉さんも登場し、初めて11人で披露されました。これまでも、そのときそのときのLiella! の「今」を表現すべく、毎回異なるバージョンで披露されてきた曲ですが、今回は極めてオリジナルに近い形のアレンジでした。というより、演奏は原曲で、歌い分けが11人に増えただけだったと思います。後にこれが「2023 ver.」と呼ばれることが判明しました。

 ライブを通したLiella! 始まりの物語として、最高のものだったと思います。

 

7. Liella! の夏、ふたたび

 11人が捌けると、次の瞬間から「Liella! コール」が始まりました。あまりの早さに今回ラブライブ! シリーズが初めての連番相手は面食らっていましたが、すぐに順応していました。連番がとても通る声が出せる人で、頼もしかったです。

 アンコールのアニメは、メンバーのイラストが『リエラのうた』風から、顔のアイコンに変わっていました。ここでは、アンコールで歌う楽曲をわいわい話し合うというストーリーでした。最後は、可可の音頭で、再び観客のみんなでLiella! の名前を叫びました。

 DAY2のアンコールは、『ビタミンSUMMER!』で始まりました。アンコールでは、すべての楽曲が11人全員で披露されました。今年は『ラブライブ! スーパースター!!』のアニメがなく、昨年、一昨年と、「Liella! の夏」を過ごしてきたルーティンが崩れるかと思いましたが、今年も変わらずLiella! の夏がやってきました。なお、DAY1では『常夏☆サンシャイン』が、オリジナルの3倍近い人数に当たる11人で披露されました。それに続く曲は『TO BE CONTINUED』でした。(DAY1は文字通り『Day1』です)。それぞれアニメの1期と2期を思い出すセットリストで、今年も (既に終わりかけではありましたが) 夏が来た、と感じさせてくれました。

 恒例の感想戦で話題になったのは、伊達さんが観客全員を事前に着席させたことです。前回が長すぎたのだろうとは思いますが、落ち着いて話を聞きたい私たちにとってもありがたいことです。

 今回のライブは、3期生にとって初めてのライブであるということと、ユニットが初披露されたライブであるというのが2大トピックでした。従って、キャストの感想もそれに即したものが多くなりました。薮島さんが、ユニットという新しいものをやることに対する期待も不安もあったことを語っていたのに対し、Liyuuさんはユニットセクションで他のユニットのパフォーマンスが見られたことから、観客と同じで仲間のみんなのファンになることができたという喜びを語っていました。私が見ていて思ったこととも重なるのですが、岬さんは部長をやっている千砂都と同じ、リーダーとしての自覚が芽生えたと言いました。

 3期生に対しては、特に一般公募枠の坂倉さんに対して、同じ一般公募枠の先輩である鈴原さんは自分のしてきた苦労を思い、後輩に辛い思いをしてほしくないあまりに心をすり減らしてきたものの、坂倉さんが強くて安堵したと言っていました。大熊さんも自分のこれまでの歩みを振り返り、先輩になる重みを噛みしめたものの、やってきた2人の優秀さに驚き、仲間になれてよかったと言っていました。仲間をよく見ていることや、本編 (幕間アニメも含む) の内容とリンクするトークになっている聡明さは、大熊さんの大きな長所です。当の3期生2人はというと、3rdライブにはライバルとして出演していた結那さんは、自分の経験を通してLiella! に入ったマルガレーテもきっとLiella! としての負けず嫌いを発揮してくれるだろうと背中を押す発言を、同じライブで観客として参加していた坂倉さんは、勇気を出してよかったという発言をしていました。様々な立場や環境からひとつのところに集まったのが、今のLiella! です。

 これらとは違いますが、印象に残ったのが伊達さんの言葉でした。「今回初めて、心からライブを楽しめた」というのが、これまで自分の歌や、かのんの遠い背中に苦しみ続けてきた伊達さんの感想でした。私たちが最高に楽しいと思っているライブでも、演者が満足しているとは限りません。それ自体は向上心であり良いことなのですが、こうしてキャストが楽しめているということは、このライブは最高のライブに違いありません。

 最高のライブを締めくくる1曲の名を、伊達さんが高らかに宣言しました。

UNIVERSE!!』

 4月からサービスが開始された『Liella! CLUB』の今年度のテーマソングです。Aqoursに続き、Liella! でもWebファンクラブの活動が始まりました。CDを買ってシリアルを入力するAqours CLUBと異なり、初めからWeb上でサブスクライブして、CDが送られてくる形式です*3「宇宙」の名の通り、本当に壮大な曲です。ライブでは、センターステージの11人を、1万の観衆が取り囲み、無数の星たちが煌めく星空のようになっていました。そして、

 この曲には、みんなで歌える「wow wow」のパートがあります。「今僕らを隔てるものはなにもない」の歌詞の通り、Liella! と声を一つに重ねることができました。それだけではなく、終盤の間奏が延長され、伊達さんの煽りでファンからLiella! へと歌を届けることさえできました。このようなライブの楽しみ方ができたのは大変貴重なことです*4。少なくともラブライブ! シリーズに関して言えば、コロナ前でさえあまりなかったかもしれません。この「wow wow」の部分は、大勢で歌うとスポーツの応援歌のようにも聞こえます。日本トップクラスのスポーツの舞台で、この声をまた届けられたら今よりも最高になるに違いないとも感じていました。Liella! の国立競技場公演は、今や見ている私の夢でもあります。

 

8. 総括 ~過去から未来への追いかけっこ~

11人で紡がれる、新たな物語

 今回のライブを通して感じたことが2つあります。

 1つは「連続性」です。Liella! は、5人で始まり、9人になり、11人になりました。人数が増えれば歌声も変わり、歌のテイストも変わっていきます。そうなると、1期生5人のLiella! を愛していた人や、9人のLiella! を愛していた人にとって、Liella! が過去のものになってしまうかもしれない、という懸念がどうしても生まれます。今回は、一心不乱に前だけを見て走った3rdライブに対して、少し過去を振り返るようなセトリになっていたのが、その懸念に答えるポイントだと思います。新しい星を迎え入れ、11人だからできる新たな可能性を模索しつつ、1期生や2期生も自分たちの始まりや過程を思い返すというストーリーが提示され、過去と現在が繋がっていることが示されました。『スター宣言』や『私のSymphony』、(見ていませんが)『常夏☆サンシャイン』のような過去の楽曲も11人化され、これらも11人で歌い継いでいくことが明示されました。

 Aqoursやニジガクの4thライブも、これまでの総まとめの要素がありました。そして、ニジガクには12人のスクールアイドルが揃うという、Liella! の4thライブと通ずるものがありました (あちらは、5thで侑が加わり、来る6thでキャスト交代したせつ菜を含め再び全員が揃う……と、変化が止まりませんでしたが)。過去と現在が繋がっているということは、同じように未来も繋がっていることを暗示しています。メンバーが揃い、これまでの地固めをすることで、未来へのスタートラインに立ったライブだったと思います。

 もう一つの側面は、伊達さんのMCや、終了後の情報発表にみることができました。発表されたのは、3期の放送時期が2024年であることと、2024年冬季の5thライブ開催です。ただ、冬季にライブをやるということは、それに重ねてアニメが放送されることはありません。つまり、アニメより前にもう一度ライブをするということです。2期から3期までの間に、ナンバリングが3つも進むことになりますが、3rd、4th、そして来る5thの位置づけの違いは何なのでしょうか。伊達さんが言っていた、4thライブで初めてライブを心から楽しめるようになったということは、それだけ先を進んでいたかのんの存在に近づいたということを意味しています。2期のキービジュアルは、かのんがメンバーたちよりも大きく前に駆け出すものでした (「巨大化」に見えますが、遠近法です)。他のメンバーたちがかのんの背中を追いかけていたように、キャストもそれぞれの担当メンバーの背中を追いかけていたのがこの1年弱の期間だったのだと思います。例えば、岬さんはユニットのリーダーとして部長の千砂都が頑張ってきたことに近づくことができました。

 4thライブが、キャストがメンバーに追い付くライブだったのだとしたら、その先に何が待っているのかというと、結那さんのMCに一つのヒントがあります。結那さんは、既にマルガレーテの気持ちに寄り添い、フォローするところまで辿り着いていました。そう、今度はキャストがメンバーに先行し、道の先から手を伸ばす番となるのです。Liella! は、これまでのメンバーとキャストが二人三脚で進むラブライブ! シリーズの関係性に加えて、キャストとメンバーが追いかけっこをするような関係性も内包しています。メンバーの夢はラブライブ! 連覇 (マルガレーテにとっては、それは雪辱でもありますが)。キャストの夢は、国立競技場ライブであり、メンバーの優勝を実現すること (キャストの頑張りで筋書が変わるわけではないと思いますが、優勝するだけのパフォーマンスに説得力を持たせられるか、ということは欠かせないはずです)。そのことを想像するだけで、5thライブへの期待は最高に高まります。

 最後に、私の個人的なことを書いて締めくくりたいと思います。今回の連番相手は高校の同級生で、部活でチームを組んでいた人でした。彼はラブライブ! シリーズのライブ、ひいては “アイドル” のライブに初参加でしたが、大いに楽しんでくれたようです。私はといえば、あの頃のことをいろいろ思い返していました。μ’s全盛期ながら、自分には関係ないと思っていた頃。私の高校にも5yncri5e! のようなかっこいいパフォーマンスをしていた生徒たちがいながら、違う世界の人間だと思いつつ、どこか僻みつつで直視できなかったあの頃。好きなものにまっすぐ打ち込むことは、特に10代の少年少女にとっては、今の私たちが思うよりも難しいことのはずです。そう思うと、自分の実体験の思い出を透かして見るスクールアイドルの存在は、ますますかっこいいものに見えてきます。

 私の過去と今と未来も、きっと連続しています。次にLiella! に会うのは、5thライブの少し手前、「異次元」のステージです。

 

セットリスト一覧

オープニング

1. Jump Into the New World

2. スター宣言

MC

3. Blooming Dance! Dance!

4. キラーキューン☆

5. MIRACLE NEW STORY

幕間

6. Eyeをちょうだい

7. 茜心

8. ガラスボールリジェクション

9. 君を想う花になる

10. Free Flight

幕間

11. A Little Love

12. Dancing Raspberry

MC

13. What a Wonderful Dream!!

幕間

14. Hoshizora Monologue

15. Including you

16. 未来の音が聴こえる

MC

17. Second Sparkle

18. 私のSymphony

アンコール

19. ビタミンSUMMER!

20. TO BE CONTINUED

MC

21. UNIVERSE!!

*1:最近の私のキャストにおける推し順位1位

*2:この不良品は交換対応となっている

*3:気づかないうちに宅配ボックスに入っていて、危うく返送されるところだった

*4:私個人の経験から言うと、8月に楠木ともりさんのライブに行った時も、同じような歌のキャッチボールをした