普門寺飛優のひゅーまにずむ

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2年間待った甲斐 ~ラブライブ! スーパースター!! 第3期感想週報①『私の決めた道』~

大サプライズの種明かしは?
 (『ラブライブ! スーパースター!!』第3期第1話『私の決めた道』より/©2024プロジェクトラブライブ!スーパースター!!)

 2年間待ちに待った『ラブライブ! スーパースター!!』第3期。もちろん史上初の3期です。

 予告でも視聴者に衝撃を与えた、「私、Liella! には戻らない」というかのんの発言。ラブライブ! 優勝グループのリーダーの電撃移籍。恐る恐る本編を見てみれば、その行動は納得の行くものであり、実にかのんらしいものでした。この「安心感」の正体を考えつつ、3期も感想週報をやっていきます。

 

1期

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2期

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前回

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1. 無かったことにはしたくない

 2期最終話、最後の最後で留学中止 (正確には延期) を言い渡されてしまったかのん。自分に歌の楽しさを思い出させてくれた、そして大きく成長させてくれた、何より最高の仲間たちであるLiella! を離れることは、並々ならぬ決断でした。その決断を台無しにされたことは納得いかなかったはずです。そして、納得がいっていない人がもう1人。ラブライブ! で健闘していたものの、結局ウィーン国立音楽学校への編入を認められなかったマルガレーテです。こちらは残念ですが仕方ありません。結果というものは否定のしようがありません。とはいえ、その指導役として日本に残ることを求められたかのんは「巻き添え」を食らった形です。

 そんなかのんは、春休みの学校でLiella! のメンバーたちから隠れるようにして行動していました。かのんがただの引っ込み思案ではないことは既にこれまでのシリーズで証明されていますが、今回もLiella! の活動を覗いたかのんには1つの考えが浮かんでいたようです。それは、大きな決心をしたのはかのんだけではなかったということです。「かのんにとってのスーパースター」であり、かのん自身続けてほしいと願ったLiella! に残った8人も、かのん無しで「史上初のラブライブ! 連覇」という大きな目標を成し遂げようと動き始めていました。迷いのないメンバーたちを見てもまだ迷いを残しているようでしたが、かのんが望む姿、やりたいことはこの話のかなり早い段階で決まっていたように私には見えました。

 今回の話から感じ取った一番大きなことは、これまでに得てきた大切なものを無駄にしないかどうかは、自分で決められるということです。留学が中止になったからといって、もう夢は叶わないと腐っていたら、結ヶ丘で2年間仲間と一緒に頑張ってきたことは無駄になってしまいます。一方で、元鞘のLiella! に戻ってしまえば、かのんが抜けた分奮起しているメンバーたちの気持ちを折ってしまいかねません。(劇中時間で) 2年前のかのんならここで折れていたでしょうし、1年半前なら皆と離れて頑張ろうとは思えなかったでしょう。前に進んでいく覚悟は、間違いなくかのんの成長の証です。

 成長しているのはマルガレーテも同じです。2期終盤でLiella! に敗れて以降、かのんや千砂都の言葉を聞き入れようという態度の変化が現れ始めました。そしてマルガレーテの中で出た答えが、改めてLiella! に勝負を挑み、勝つことでした。それは、Liella! の強さ、パフォーマンスの素晴らしさを認めたからです。相手を倒したいと思うのは相手を尊敬すること (『映画ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編』とも重なる主題です) で、自分の弱さを認めることは強くなる第一歩です。

 Liella! メンバーも本当に強くなりました。かのんに偽らざる気持ちを伝えた上で、勇気を出して相談に来てくれたかのんを肯定し、温かい言葉をかけてくれた千砂都。母の想いと自分の反省を胸に、マルガレーテに「私たちは同じ結ヶ丘の生徒」と言った恋。可可やきな子のような、かのんがモチベーションだったメンバーたちも、今は納得していなくても強さを見せてくれると確信しています。

 

2. 待ちくたびれた私たちをも結ぶ物語

 その「台無しにしたくない気持ち」は、視聴者にとっても同じだったと思うのです。

 2期最終話の結末には、私も困惑しましたが、世間の反応は賛否両論、というより非難囂々に近いものでした。正直、ここまで叩かれるものかと怖いほどでした。批判される点は数々ある中で、脈絡なく突き付けられた留学中止で11話・12話の2話もかけた決心を台無しにされてしまった感覚が違和感の中でも大きかったと思います。

 3期1話は、それに対する見事なアンサーだったと思います。何が起きたのかは一通り説明され、その上でかのんが自らと仲間の決断を尊重した答えを出しました。Liella! はかのんなしでも再び頂点を目指すという新しい目標を継続しました。かのんが請われたのはマルガレーテに歌を教えるようにということでしたが、かのんは自らもマルガレーテと一緒に成長することを望みました。メンバーたちの行動原理が1期や2期から一貫していたのも、今回の話がすっきり呑み込めた理由の1つだと思います。さらに、マルガレーテやかのん、Liella! 各々についての物語の始まりが、1期において主題だった「自分の夢を自分の力で叶える」というものだったので、物語が『スーパースター!!』の良かったところに回帰した感じもします。もっとも2期は、かのんが一足先に成長してしまっていたことや、2期生がまだ未熟だったこともあり、あえてそれとは異なる描き方をしていたのだと思います。

 さて、出来事の表面だけを見れば、かのんは2年間所属したLiella! を脱退し、対立するグループを立ち上げたわけですから、Liella! を裏切ったかのようになってしまいます。しかし、そうならないような描き方が見事だったと思います。

 かのんは以前から、自分の考えや思いをしっかり言葉にできる人です。今回も、今すぐに合流しないほうがそれぞれの目標を持ち、競い合いながら成長できること、そして「いつかひとつになる」という、明確な将来像も伝えていたので、とても印象が良かったと思います。皆、前に進もうとしているのですから、進んだ先にしか連覇はありません。

 そしてもう一つ、『ラブライブ! スーパースター!!』らしいと思うのが、メンバー同士の信頼関係です。もちろん他の主人公グループのメンバーたちも強い信頼関係で結ばれてはいるのですが、1期や、2期でも一部のエピソードで、信じることの大切さや強さをメインに描いていました。信じる気持ちの強さゆえに、亡くなった親友がこの世に遺した娘を結果的に追い詰めてしまったり、みんなで歌うと思っていた幼馴染を1人でステージに放り出したりと、常識からかけ離れた (!?) 行動をする人物もいますが、最終的にそれらが報われ、絆が強くなる物語でした。今回も、1つの学校に2つスクールアイドルグループがあることは一時的にはお互いにとって不利になってしまうかもしれません。しかし、きっと最終的にはそれが良い結果をもたらすのではないでしょうか。

 そもそも、私たちは先に「結果」を知っているというのも確かです。Liella! は11人で、それぞれに目標を持ちながら仲良くやっている、という姿をライブやラジオで見てきているので、そこへ向かう物語という点では納得が行きやすいはずです。ED後にかのんとマルガレーテのもとに現れた、夏美と似た面影のある少女の正体だって、もちろん知っているわけです。

 3期になり、『ラブライブ! スーパースター!!』の良いところが戻ってきたように感じます。1期・2期で振り子のように揺れていた「私を叶える」と「みんなで叶える」も、ひとつになるのでしょうか。

 

3. OP・リエラのうた

 2期に続き、3期でも1話からOPテーマを聴くことができました。『Let’s be ONE』は出だしの高音と黒ベースの衣装が印象的です。Liella! が今までにないものを取り入れていく、あるいは様々な色を重ねていくことを意味しているのでしょうか。

 『リエラのうた』コーナーは、待望のマルガレーテの歌でした。『dolce』の映像はぬいぐるみになったメンバーたちが可愛かったです。ところで、「歌は友達だった」という歌詞が気になります。2期で「歌は力」と豪語していましたが、マルガレーテはまだ初心を覚えていて、そこに帰ることを心の底では望んでいるのでないでしょうか。