普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

NEW GENERATION LOVELIVE! ~ラブライブ! スーパースター!! 感想週報①『まだ名もないキモチ』~

 新しい時代が始まりました。ラブライブ! スーパースター!!』の第1話、放送開始です。こちらも気力の続く限り感想を書いていきたいと思います。

 こちらはYouTubeの配信に合わせ毎週火曜日公開を目標にします。2日空けると言いたいことが溢れてしまいますが、かいつまんでお伝えします。

 

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予告にもあったシーン。予告で泣いたアニメは初めてです……。(三船栞子並感)
(『ラブライブ!スーパースター!!』第1話『まだ名もないキモチ』より/
©2021 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!/配信URL: 

https://www.youtube.com/watch?v=3jEhJEvj9io)

 

 

1. 冒頭、5分の衝撃

 とにかく作品の最初の5分をご覧いただきたいです。今のうちなら見逃し配信も実施されています。私が何かを語ることは蛇足に感じますが、語るためのブログですし、語るのが好きなので、最小限にコメントを添えたいと思います。

 「歌」の力を前面に押し出す本作らしく、いきなり始まる澁谷かのんの弾き語り。からの自己紹介。

 歌のオーディションのようなシーン (結ヶ丘女子高校音楽科の入試だと後でわかります) での失敗から、急にダウナーになりぼさっとしながら家を出て、そこから再び歌い出すところ。

 そして、唐可可との出会い。

 ここまでがわずか5分間です。

 

 主人公の自己紹介から、主人公の夢を壊すような出来事が即座に起こるという流れは、実はラブライブ!』の1期1話にそっくりです。ラブライブ! スーパースター!! のスタッフは、監督、脚本、劇伴など多くが『ラブライブ!』と重なっています。

 ラブライブ! らしい歌の楽しさや背景の美しさを見せながら、かのんの抱える傷を簡潔に描写して、そしてラブライブ! らしく少女と少女の出会いで締める、懐かしさと新しさ、新情報と感情の衝撃、そのすべてが一緒くたに押し寄せる、怒涛のような5分間なのです。

 これが、新しい時代の『ラブライブ!』のはじまりです。

 

2. 結ヶ丘女子高等学校とは?

 結ヶ丘女子高等学校 (以下、結女) は、神宮音楽学校 (以下、神宮) を前身として葉月恋の母、花が設立した学校、と説明がありました。アニメで判明した新情報として、この学校には普通科と音楽科があり、制服もそれぞれで異なっていることが明らかになりました。そして、恋と、かのんの幼馴染の嵐千砂都は神宮の流れを汲む音楽科に、平安名すみれ可可普通科に入学していました。かのんは先述の通り、音楽家を志望していましたが、試験に合格できず、普通科の生徒として新たな学校生活を始めます。

 何よりも印象が強かったのが、普通科と音楽科には、事実上学校が分裂しているといっても過言ではないほどの隔たりがあることです。もちろん受験に落ちたかのんのコンプレックスということもあるでしょうが、音楽科で初代生徒会長となった恋は、音楽に力を入れているからスクールアイドルができると信じている普通科の可可を、勝手な真似をするなと一蹴します。可可を庇うかのんを生半可な気持ちで行動していると決めつけているのは、真剣なら音楽科に入っているはずだ、と信じているからでしょう (恋はかのんの事情を何も知りません)。生徒たちにもスクールアイドルを良く思わない者が多いようです。理事長である花も、「特に音楽科の生徒は (歴史を) 引き継ぎ、大きく羽ばたいていってほしいと思います」と強調するなど、普通科に対する選民意識のようなものを感じてしまうのは私だけの思い込みではないと思います。描写としては何よりも制服の違いがそれを物語っています。一方で、キービジュアルでは全員が同じ制服を着ています。さて、2つの学科は、どのようにひとつになるのでしょうか……?

 

3. みんなを隔てる高い壁

 先述の2つの学科の間の壁もありますが、特にかのんの抱える劣等感は、四方に壁を作ってしまっています。かのんのトレードマークでもあるヘッドホンは、なんと外界の音を遮る壁だったのです。一人だけの世界にこもっていれば、心ゆくまで大好きな歌を歌える。しかし人前では歌えなくなってしまい、「自分のことが嫌になる」ことを何度も味わって、歌うことで人に楽しい気持ちを伝えることも、意外にものをはっきり言える性格も、自分の元から遠ざかっていきます。家族に塩対応なのは年頃の女の子らしいですが、物言わぬマンマルだけには微笑めるのでした。

 千砂都はそんなかのんの歌を今でも望んでくれていますが、音楽科に受かったことで、結果的にかのんの気持ちから遠ざかってしまいました。音楽科にはスクールアイドルを快く思わない人も多いという事実を知り、伝統校としての息苦しさに直面するのも、千砂都でした。

 その伝統校を受け継ごうとする存在であるはというと、やはり「神宮」の存在に強く縛られているように思います。これは予想ですが、母も恐らく神宮出身で、「結ヶ丘を素晴らしい学校にする」という使命には、母の育った神宮を甦らせるという意味が、言外に込められているのではないかと思いました。そこにはスクールアイドルなどというものはなく、スクールアイドルを学校から遠ざけることしかできないのだと思います。

 すみれの出番はわずかでしたが、『始まりは君の空』のMVにヒントを見出せます。小さい頃のすみれの隣の子にスポットライトが当たるシーンです。もしかすると、すみれの心の中にもかのんとよく似た傷が眠っているかもしれません。その共通点で繋がれるかが、これからの鍵になると思います。

 ここまで見てきて、可可だけが明らかに異質だとわかります。スクールアイドルをやりに、スクールアイドルの強豪校などではなく全くスクールアイドルと縁のない新設校に飛び込んできて、突撃あるのみで、かのんを始め生徒の心に突っ込んでいくのが可可です。そんな可可もかのんの過去を知り、精一杯寄り添い、応援しようとします。かのんも可可のスクールアイドルを応援しようと奮闘します。お互いを想い、応援したこと、されたことが、一度潰れた夢への、かのんの一歩に繋がったのです。前作主人公である侑が、ある意味一方的にスクールアイドルを応援する中で、自分の夢が生まれたとはある意味対照的です。

 「ソーシャルディスタンス」で踊っていた『未来予報ハレルヤ!』のライブパートでしたが、壁を乗り越えて5人を結ぶきっかけがあるとすれば、『私のSymphony』のこの歌詞にもしかしたらヒントがあるかもしれません (私がこれが好きなだけなのですが……)。

「なんでもできそうなあの子も いつも笑い絶やさないあの子も 迷いながら 戸惑いながら きっと夢をみてる」

 ラブライブ! シリーズの中でも、考察しがいのある作品だと思いました。次回も楽しみに待っています。