ゲームにはまってしまった葉月恋。その結果見えてきたのは、恋が周りの人々に果てしなく愛されていること、母の祈りが通じていたことでした。
ネタ回に表れた母の想い
1週のブランクがあって2週間ぶりのアニメです。もう少しだけ葉月花と神宮音楽学校にスポットライトが当たる回が続きます。今回重要になるのが、Liella! において「夜空」と同じくらい重要なキーワードである、「同じ場所」、そして「道」です。
1. 神宮音楽学校
花の悲願であった新しい学校には、音楽で人々が結ばれる場所という意味を込めて「結ヶ丘」と命名されています。では、その花たちが最後の生徒となった「神宮音楽学校」は、なぜ「神宮」なのでしょうか。
時は『スーパースター!!』のプロジェクトが始動するちょうど100年前の、1920年に遡ります。数年前に亡くなった明治天皇の威光を永遠に刻むため、東京・代々木に明治神宮が創建されました。このとき、広大な神社と同時に、少し離れた青山に神宮外苑として、これまた広大な公園が整備されました。この建設のために多くの若者が動員されましたが、その中で外苑には若者たちのためのスポーツ施設も数多くつくられました。やがて、この明治神宮があるエリアのことも「神宮」と呼ばれるようになり、明治神宮の南側からまっすぐに伸びる大通りを「表参道」と呼ぶようになりました。ここまでが我々の知る、そして歴史好きのすみれも知っているであろう歴史です。ここにかつて、神宮音楽学校がありました。
それから102年*1。かのんはラブライブ! 予選のライブを配信するために、学校を表現でき、なおかつインパクトのある場所を探していました。学校の歴史という視点をくれたのは、父に似て本が好きな妹のありあでした。1期8話で結ヶ丘の成り立ちに迫ったのと同じように、今度はそのルーツである神宮の生い立ちに迫ります。
こちらの創立者が何を思ったかは妄想するよりほかにありません。しかし、学校というのはまさに「若人のための場所」であります。そして、「神宮音楽学校」というからには、立地条件において明治神宮を意識しているとみて間違いありません。明治神宮が多くの若者を動員したように、その外苑に未来ある若者たちの集まる場所が作られた*2ように、音楽が若者たちを集め、結ぶ場所として神宮地区に学校ができた、と想像することはできます。
2. 答えへの道
ライブステージ探しは、最初例によって迷走から始まったように見えました。昨年も提案されてすぐに没になった外苑球場*3ですが、可可とメイが立っていた地図をよく見ると、実はこの時点でLiella! が最終的にステージに選ぶことになる外苑の銀杏並木が描かれています。どこを走っているかわからないようで、実は答えへの道は既に存在していたのです。
ただし、ステージ選びは単純に学校のことと地域のことを「混ぜる」だけではダメです。たこ焼きとスムージーを混ぜるようなやり方では、美味しいと思う人もいるかもしれませんが、たくさんの人に受け入れてもらうことはできません。
かのんはこの街の素敵な場所、学校に相応しい場所を探しに出かけ、きな子と出会いました。しばし、二人は「デート」することになります。その中で、原宿・渋谷の賑やかさ、人を集める力に触れていくことになるのです。ところで、きな子の苗字は桜「小路」です。ここにも既に、道を意味する言葉が入っています。かのんの言うようにこの街に後から来た人物だからというのもありますが、答えに少しずつ近づいているという運命的なものを感じます。原宿・青山出身以外では、スクールアイドルという確固たる目的を持って来た可可に対して、人を結ぶ力に導かれたきな子、という見方もできるかもしれません。
この「デート」のシーンは、キャットストリートで終わります。正式名称を「穏田キャットストリート」といい、表参道と同じく神社 (こちらはすみれが住む神社) の名前を冠する通りです。かのんはもう少しで、気づけそうなところに来ていました。
キャットストリートで出くわしたナナミたちは、昨年以来再びLiella! に対する全力バックアップ態勢を宣言します。役員4人中3人がLiella! である生徒会を役員の七草ナナミ*4中心に支え、ステージの候補も生徒たちから募っていました。今や200人を優に超える生徒数となった結ヶ丘を引っ張る力を持っているのが、『ラブライブ!』以来の所謂「神モブ」が「神モブ」たる所以です。
そして、3人のリードで生徒たちが導き出したステージが、『Starlight Prologue』をやった表参道でした。流れ的に順当に「道」に辿り着きました。しかし、確かにここは『スーパースター!!』のキービジュアルの場所でもあり、Liella! といえば表参道なのですが、前年と同じステージでもあり、それはインパクトに欠けると思った9人。そこでかのんは、若人が集う「もう一つの明治神宮」に思い至るのでした。9人で、あるいはきな子と2人で町中を歩き、ありあの助言もあってたくさん調べものをした成果が出ました。
道が結ばれ、若人が集う場所。「神宮」と「結ヶ丘」の理想が、ここで一つに結ばれたのです。
3. 祭りだ祭りだ!
ラブライブ! オンライン予選。昨年は『ノンフィクション!!』で初戦を制した大会でした。ルール変更もあって、今年は9人にとって、学校の皆や学校の歴史にとって理想的な場所で、『Chance Day, Chance Way!』を披露します。「Song for All」の理念も受け継がれています。この曲は、タイトルからは想像もつかない「祭り」をモチーフにした衣装と舞台演出、楽曲、振り付けになっています。明治神宮が関わるところで、神社をイメージしてお祭りになっていることは想像しやすいですが、この「祭り」というモチーフについてもう少し考えてみたいと思います。
神社では年に一度、あるいは複数回のお祭りが開かれます。明治神宮の例祭は明治天皇の誕生日、11月3日です。ちょうどラブライブ! 予選の時期ともやや近いです。祭りというハレの日には、人を集める力があります。きな子のような地方から上京してきた人は東京の賑わいを見て毎日がお祭りかと思うこともあるようですが、祭りはまさに「賑やかな音楽のもとで人と人が出会い、想いが結ばれていく」ところです。神宮音楽学校ができる少し前から、あるいは人々の心としてはずっと前から、この地に受け継がれてきた「祭り」の心を、とても華やかに歌い上げる曲が、『Chance Day, Chance Way!』です。12月から予定されているライブという「祭り」にも、期待せざるを得ません。
かのんの「Liella! の道が、結ヶ丘の道が、あなたと交わりますように!」という台詞。2期でも1、2を争う名言になると思います。Liella! の皆を引っ張る、かのんの力強い一面が発揮され、その勢いのまま私たちに語り掛けてきます。私たちの道は、きっとどこかで賑やかな音楽に、誰かの笑顔に繋がっていると思います。そして、Liella! の道は、「勝利」へと繋がっているでしょう。