普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

私「が」叶える物語 ~ラブライブ! スーパースター!! 感想週報⑨『君たちの名は?』~

ついに始まった物語

carat8008.hateblo.jp

 

 メンバーが5人揃い、結ヶ丘という学校が本当の意味で成立した前回。5人はようやくスクールアイドルとして動き出しました。しかし、彼女たちには致命的なものが欠けていました。

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そんなグループ名で大丈夫か?
(『ラブライブ!スーパースター!!』第9話『君たちの名は?』より/
©2021 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!/配信URL: 

https://www.youtube.com/watch?v=ldvKwP5iD_U )

 

1. 『スーパースター!!』のラブライブ!

 5人が動き出すきっかけとなったのが、『ラブライブ!』の開催です。シリーズを以前からご覧になっている皆様ならもう説明する必要はないと思いますが、ラブライブ! はスクールアイドルの頂点を決める大会です。甲子園やインターハイがあるように……というたとえがなされることが多いと思います。運動部と文化部の両方の側面を持つスクールアイドル部の大会だけに、注目度はどの作品でも非常に高くなっています。それと同時に、ほぼすべてのスクールアイドルが夢見る、最高のステージでもあります。

 『劇場版ラブライブ!』と『ラブライブ! サンシャイン!!』においては、ラブライブ! の会場といえばアキバドームとされています。2作の時間軸は繋がっており、μ's引退後5年間はアキバドームで大会が開かれたことがわかります。現実世界の東京ドームに対応しており、実際にμ'sのFINALライブとAqoursの4thライブはここで開催され、6thツアー*1の東京会場にも決まっていました。

 一方で、今回のラブライブ! 会場は神宮競技場ということになっており、OPでLiella!が踊っている競技場であることがわかります。言うまでもなく、現実世界の国立競技場です。ということは、μ'sやAqoursが東京ドームに立ったように、いずれ国立競技場がライブ会場となるのでしょうか? これからのラブライブ! に期待が高まってしまいますね……。

 この世界のラブライブ! に出場した学校の中には、「入学希望者を集めた学校」や「廃校の危機から一気に有名になった学校」があるようです。それぞれ、μ'sやAqoursが成し遂げたことと同じです。同じような夢を叶えたグループが、この世界にもあるのです。

 それはμ'sやAqoursそのものではないか? とも思いますが、ここがμ'sやAqoursが生きた直接の未来ではないと考えられる情報もあります。『ラブライブ!』や『ラブライブ! サンシャイン!!』のラブライブ! は年2回。夏休みの終わりと、春に2回の大会があります。第2回 (初めての春大会) 優勝のμ'sは第1回棄権、第12回の春大会 *2 優勝のAqoursは第11回の夏大会では地区予選まで進出しました。ところが、この世界には夏大会の気配がありません。前年大会に出場したSunny Passionは、この夏は島で主催イベントを開いていました。島と学校を有名にする目的であれば、ラブライブ! に出場するのが最良の手段であるはずです。私は、そもそも大会が存在しなかったのではないかと考えています。このことから、この世界のラブライブ! はμ'sやAqoursの世界とは違った歴史を辿ったか、あるいはAqoursの優勝後に、スクールアイドルたちの負担を考えて、規模が縮小されたかのどちらかです。

 もしかすると直接繋がる時間軸ではないかもしれませんが、この物語がμ'sやAqoursを歴史として踏まえていることは明らかです。

 

2. グループに命を吹き込む名前

 今回のテーマはグループ名。μ'sやAqoursの名前はもっと早い段階で決まっていましたが、結ヶ丘のスクールアイドルは名前を決めずにここまで来てしまいました。

 今までの「μ's」や「Aqours」、それに今回決まった「Liella!」という名前も、現役の高校生が自分で名乗るにはやや気取った名前ではないでしょうか? 普通に考えたら「Saint Snow」や「Sunny Passion」のような名前が出てきそうな気がします。当初、思いつかないかのんは「結ヶ丘スクールアイドル」などと言っていました*3

 μ'sの名前は、学校の生徒に名前を募ったら、加入前の希が密かに考案してきた名前です。一方でAqoursは、かつてダイヤたちが始めようとして、叶えられなかったスクールアイドルグループの名前を、ダイヤが託したものです。つまり、自力で自分たちの名前を考えたのは、シリーズでもLiella! が初めてです。丸々1話使うに値する、歴史的な出来事だと思います。

 「Liella!」という名前は、フランス語のlierに由来します。花が想いを込めた「結ヶ丘」という名前を参考に、まだ真っ白な5人が、いろいろな色の光で結ばれることを表現したのだそうです。学校に込められた想いを受け継ぎ、「学校を代表する名前」というかのんの思い描いていたイメージをはっきりと具体化しています。明言されていませんが、もうひとつの語源、brillanteは「輝かしい」というイタリア語の形容詞です*4。このような複雑な名前を、どのようにメンバーが考える設定にするのだろうな、と思っていたら、かのんの父が翻訳家という便利な設定がありました。ちなみに、グループ名に学校の名前の一部が入った例を、私たちは函館「聖」泉女子のSaint Snowしか知りません。

 自分で名前を付けたという重要性は、これだけではありません。現実世界で「Liella!」という名前を付けたのが誰なのか、そして、かのん役・伊達さゆりさんがどこから来たのか*5を考えると、一層その重要性がわかります。

 名前を考えたのは劇中では勿論かのんですが、現実には「とら」さんです。毎話のスタッフクレジットにも掲載されています。今までにも、μ's、Aqours、ユニット10個の組み合わせと名前、そして虹ヶ咲の主人公は公募で命名され、決選投票で決まりました。一方で、『スーパースター!!』では学校名から校章、様々なアイテムに至るまで公募や投票で決まっています。そればかりでなく、主演声優も一般公募で選ばれました。前作主人公の高咲侑がラブライバーを投影したものだとすれば、かのんはラブライバーの中から生まれた光です。実際にはこの一般オーディションでは2名が合格し、「シリーズの歴史をLiella! に繋げる」役割を担った恋もこの枠になりました。

 これらの公募には、たくさんに人々が応募しました。そして、選ばれなかった名前もたくさんあります。その中で、最終候補に残った「Yuine」や「0sing」、「Yunity」など*6は、原宿の街中にたくさん見られます。隠してしまいましたが、恋も「綺羅星」という名前を考案していましたね。それらがみな、小さな星になって、かのんの背中を押しました。そこで流れた『Dreaming Energy』には、「その声は誰だろう?」という歌詞がありますが、この主は仲間たちだけではないのかもしれません。

 完全な余談ですが、「かのん」という名前はAqoursの没名称にも見られます。「歌音」と書きます。偶然の一致ですが、この名前を投稿した方は今頃驚いているかもしれませんね。

 

3. 雑感

・結ヶ丘の制服が変わりました。音楽科が旧制服、普通科が新制服を選べるようになりました。花の想いに生徒が辿り着くことを信じて待ち続けた理事長ですが、その間に2科の関係が悪化したことを流石に反省したのでしょうか。結果的に恋も、花やLiella! の4人と同じ制服を着られるようになり、よかったですね。ゆえに、7話感想週報の「恋も転科することになる」は、×です。

・「夢、魂、命の源」。これと似た表現を聞いたことがありますね。「伝説、聖域、聖典、宇宙にも等しき生命の源」。『サンシャイン!!』1期2話のダイヤです。この時は、μ’sという1グループに向けられていた言葉が、今度はラブライブ! が生み出したたくさんの物語に向けられています

・自分の主張が積極的にできなかったり、同じ台詞を言ったり、今回はかのんと恋が似た者同士である描写がありましたね。

 

 Liella! という素晴らしい名前を得た5人ですが、ラブライブ! に出るには、もうひとつ避けては通れない問題があります。ラブライブ! に出る目的です。μ'sもAqoursもそれに悩み、虹ヶ咲に至っては自分たちの夢を叶えるために、あえてそれを目指さない決断をしました。エントリーはできても、出ることが目的では、勝ち進むことはできません。5人は、何を目指すのでしょうか。

*1:実現せず

*2:5周年を迎えた後、初めての春大会はこのカウントとなるはず

*3:μ'sの名称最終候補に「音ノ木坂アイドル部」、Aqoursに「浦の星少女隊」がある。あながち酷いセンスではないかもしれない

*4:音楽用語でもある

*5:宮城県

*6:この中にも「結ぶ」という意味が込められたものがたくさんある