普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

ヒーローと私 ~ラブライブ! スーパースター!! 感想週報⑥『夢見ていた』~

 タイトルを見て「おかしいな、ヒロインでしょ」と突っ込んでくださったラブライバーの皆様、こんにちは。前々週は最後1秒のせいで心がざわついてしまいました。なのであまり冷静な分析ができなかったのですが、今回その答えが明快に示されました。

 結論から言うと、神津島」をおまけと考えることは、許されなかったのです。

私の想像と仮説が紙屑と化した前回の記事

carat8008.hateblo.jp

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ヒーローは、大して遅れずにやってくる
(『ラブライブ!スーパースター!!』第6話『夢見ていた』より/
©2021 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!/配信URL: 

https://www.youtube.com/watch?v=0lr6v0EuzXE )

 

1. 千砂都の思い・解答編

 前回予想するにとどまった「かのんちゃんにできないことをできるようになりたい」という千砂都の誓いの意味は、想像以上に重いものでした。

 小さい頃、いじめられていた千砂都を救ったかのん。かのんに守られるうちに、弱かった千砂都の中に目覚めた思いが、「強くなって、かのんを守りたい」というものでした。かのんは、千砂都のヒーローでした。千砂都がかのんを守れるほど強くなるには、かのんを頼らず、自分の力でかのんを超えられるものを手に入れなければならないと考えたのです。そのために、現在までずっと、血の滲むような努力を貫いてきました。かのんから離れようとしていたのは決別でも遠慮でもなく、かのんと肩を並べられるようになって戻ってくるつもりだったのです。それでも、弱さを見せることが無かったわけではなく、同好会に入りたげなサインを時々出していたのですが、意志ははっきりしていました。

 千砂都といえば「まんまる」が好きですが、その反面、行動が極端なところがあります。それはかのんへの想いが強いゆえでしょうが、ダンスの大会で優勝できなければ結ヶ丘をやめて海外修行、できれば音楽科もやめてきっぱりとスクールアイドルに専念するというどちらにしても思い切った行動は、まさに真ん丸な竹を真っ二つに割ったようです。自分を追い込むことで強くなろうとするのは、さながら少年漫画の登場人物のようですね。

 ところで、前回出番のなかった恋は千砂都の練習室に入ってきて、千砂都の準備していた退学届を目撃してしまいます。そして千砂都のことを心配して何度も練習を覗きに来るのですが、スクールアイドルのことは嫌いでも、生徒のことを思う純粋な気持ちに心を打たれた方は少なくないでしょう。また、その仕草がとてもかわいいですね。千砂都の壮絶な覚悟を聞き、恋は衝撃を受けました。少し前の恋なら「わたくしの学校では駄目なのですか……?」などと言いそうですが、恋は本気の人のことは本当に尊重しているのです。

 

2. ヒーローは流星の如く

 かのんが千砂都にとってのヒーローだったように、千砂都もかのんにとってのヒーローでした。千砂都の決意に勇気づけられて、かのんも今まで歌を続けてきました。うまくいかないことの連続で、目指していた音楽科入学も叶いませんでしたが、そこでスクールアイドルに出会い、夢が途切れることはありませんでした。前回、かのんと千砂都の関係は「鏡」であると書きましたが、それは当たっていると言ってもよいでしょう。

 かのんは千砂都の好きな丸い満月を、遠く離れた神津島から見て、一旦距離を置いていた千砂都のことを思います。故郷から離れて見る月のことは阿倍仲麻呂もエマ・ヴェルデ*1も言葉にしていますが、ここでの「まんまる」には特別な意味があります。

 そして、そんなかのんの背中を押したのがSunny Passion*2の悠奈でした。悠奈といえば歴代ライバルには珍しい元気系キャラですが、6話では学校と島のために始めたサニパを通して「誰かのためだと思うと力が湧く」ということをクーカー*3に伝えます。悠奈は本当にいい先輩で、かのんたちに色々なことを教えてくれます。「話は直談判に限る」ということを、身をもって教えてくれたのも悠奈です。

 Sunny Passionは澁谷家のカフェに押し掛けに来る前にも、学校と島のために、本土に何度も繰り返し足を運んでアピールをしていたと考えられます。その経験によって、かのんが大切な人に直接会って思いを伝えたくなったとき、その急なお願いにも対応することができました。神津島から原宿までは直線距離で170 km。行きの客船では10時間もかかりましたが、高速船なら3時間、飛行機なら調布まで45分です。どれを使ったかはわかりません*4が、駆けつけるには信じられないような距離であることに変わりありません。思えば歴代作品では、迷いを抱えたまま空港まで向かったことりを迎えに走った穂乃果や、(そのオマージュとしての) 嵐珠を迎えに走った栞子はじめ『スクスタ』のニジガクメンバーなども、想いを伝えるためにどんな場所からも駆けつけてきました。

 いま、人が人と会いづらい時代になって、それが科学的にやむを得ないことなのはわかるのですが、直接会うという方法が古いものだ、もう人と人は直接会って話さなくても仕事や人生ができるのだという方向でそれに納得しようとする人が増えているように思います。この時代に直接会って想いを伝えることの価値が消し去られつつあるのであれば、この回はそんな世の中へのカウンターのようにも思えてきます

 

3. 前に進むシリーズ作品

 ところで、海に囲まれた田舎で、学校と地域のために活動していたSunny Passionのようなスクールアイドルを、私たちはとてもよく知っています。Aqoursです。

 『ラブライブ! サンシャイン!!』では、学校の生徒や地域の人々は暖かくAqoursを支え、Aqoursはその力で運命に立ち向かっていきました。これからLiella! と呼ばれるようになる彼女たちは、それとは逆に、学校の人々を味方につけるのすら難題です。人の心を動かすという、スクールアイドルの大きな目標の1つに立ち向かうことになります。Aqoursは直接出て来なくても、そのような形で想いが受け継がれていくのです。ところで今回の挿入歌は『常夏☆サンシャイン』ですが、少なからずそのことも意識されているのでしょうか。

 次回は「生徒会長選挙」。シリーズでは、『スクスタ』で描かれた要素です。それを拾うということは、学校をどのように捉え、生徒会を通してどのように自己実現するのかというぶつかり合いに、本作なりの答えを出すことになります。『スーパースター!!』がどのように過去作を超えていくのか、それを目の当たりにできるのが楽しみです。

*1:『スクスタ』の待機ボイス

*2:LoveLive! Daysにて表記が判明

*3:すみれが加入しているが、グループ名は変更されていない

*4:大会はライブの前日で、満月を見たのはそれよりもさらに前なので、一応往復客船でも間に合うが、ライブを仕上げるための時間を考えると、速い交通手段を使っていても不思議はない。ただし、大会を終えて最も早く神津島入りできる手段は客船