応援から始まった物語。応援の力は、ここまで大きくなった
『ラブライブ!』シリーズアニメでも異色作として大ヒットした『アニガサキ』。そのグランドフィナーレとして投下されたのは、楽曲数も作画量も桁違いのお祭り最終回でした。正直言って今は気持ちが追いついていませんが、『感想週報』も締めくくりとして、思いつく限りのことをしようと思います。
前半は劇中の1stライブの感想を、後半は物語の総括をまとめました。
1. FIRST LIVE with You なりきり全曲感想
1話丸々ライブだったということで、この項ではこのライブに参加した人になりきって、各曲を紹介してみたいと思います。
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あけましておめでとうございます。昨年はラブライブ! 以外でもスクールアイドルが熱い1年となりましたが、12月31日にその立役者である虹ヶ咲学園のスクールアイドル同好会が単独ライブを開催し、そんな1年を締めくくりました。
今回の会場は東京ガーデンシアター。ラブライブ! ならまだしも、1校単独開催のスクールアイドルのライブとしては規格外の大きな会場です。申し込みの確認や誘導などのオペレーションもプロ顔負けのスムーズさでした。虹ヶ咲学園には約3,000名の生徒がいるそうですが、これほどの大きな学校でたくさんの生徒がスクールアイドルのライブに協力していて、レベルの高さを感じます。参加者には他校の制服の女子生徒も多く、中にはスクールアイドルらしき人も見かけました。
トップバッターは鐘嵐珠さんで、曲は新曲の『夜明珠』でした。第2回スクールアイドルフェスティバルの後に同好会に加入したそうですが、同好会の鐘さんも、また一段とセクシーさにもパワフルさにも磨きがかかっていたと思います。次は中須かすみさんの『☆ワンダーランド☆』です。中須さんがこだわる「カワイイ」を詰め込んだステージで、終盤に大きなバルーンが飛んできて驚きました。近江彼方さんの『My Own Fairy Tale』も、負けず劣らず個性的で、なんと近江さんは三日月型の椅子に乗って上空から登場しました。
この曲の途中、私の数列前に、大きな横断幕を掲げたファンがいました。見ると、東雲学院の生徒が中心のようです。驚きましたが、先週のラブライブ! の予選のときに湾岸地区の学校の生徒たちが集まって撮った映像で、同じことをしていたという話を思い出して納得しました。東雲学院のエース、近江遥さんが彼方さんの実の妹であることはよく知られています。
次の曲はスイスからの留学生、エマ・ヴェルデさんの『声繋ごうよ』。昨年はこの歌声を日々動画で聴いて元気をチャージしていましたが、今回生で聴けて、頑張ってきてよかったと思えました。客席も緑色に染まって、草原の中で風になっているようでした。
ライブ会場の最寄駅の近くで、天王寺璃奈さんの友達だというニジガク生から、「ブレードで客席に璃奈ちゃんボードを作ろう」というフライヤーを受け取っていました。実現するか半信半疑だった私は、ニジガクファンを甘く見ていたと言わざるを得ません。現実に、大きな大きな「にっこりん」が咲いたのです。その天王寺さんは、今回「璃奈ちゃんボード」無しで登場しました。「皆ともっと繋がるためのボード」だと、以前インタビューで語っていたので、不安はあったかもしれませんが、素顔を見せてくれた*1天王寺さんにこのような形で応えられ、新しい「繋がり」ができたように思います。言葉でも表情でもないのに心と心の間を伝わる、『テレテレパシー』です。
昨年末のスクールアイドル界隈は、アメリカの天才作曲少女ことミア・テイラーさんがスクールアイドルとしてデビューしたことへの驚きでもちきりでした。『Toy Doll』は、そんなテイラーさんの新しい挑戦が詰まった曲です。とはいえ、流石の素質というべきか、デビューからごく短期間とは思えない観客の煽り方で、まるでステージから火が出ているのと同じように、歌声も燃えていました。
朝香果林さんの『Wish』は打って変わってしっとりとしたバラードです。モデルとしても活躍する朝香さんは高校生離れした大人っぽさが魅力ですが、このような形で大人っぽさを表現することを思いついたのは天才だと思います。
第2回スクールアイドルフェスティバルでは、同好会メンバーがユニットを組んでいたのは記憶に新しいと思います。宮下愛さんの『友&愛』、三船栞子さんの『翠いカナリア』、桜坂しずくさんの『オードリー』、3曲続けてユニットのメンバーが登場して、一緒にパフォーマンスしていました。表現の仕方という枠にとらわれず、ソロとユニットを混ぜてしまうとは、流石スクールアイドル同好会です。三船さんのユニットは、一切事前情報がなかったので、客席もどよめいていました。鐘さんとテイラーさんという留学生2人とのユニットでしたが、今後一体どんなパフォーマンスを見せてくれるのでしょうか。
第2回SIFといえば、開会式で優木せつ菜さんのもう1つの顔が明らかになったのもこのときでした。『MELODY』は、優木さんのスクールアイドルではない部分を歌っているかのようです。伝説のライブとして知る人ぞ知る『CHASE!』ともまた違う、疾走感はありながら、大切な人に懸命に思いを伝えようとするような歌詞が心に響く歌でした。
ソロ曲の最後は上原歩夢さんの『開花宣言』でした。初めて動画で上原さんを見たとき、素朴なパフォーマンスをする子だと思いましたが、今は歌もダンスも自信いっぱいで、皆への愛に溢れているようなパフォーマンスになりました。スクールアイドルがこれだけ人を成長させるのだと、改めて驚きました。
今回のライブの曲は、なんとすべて新曲*2です。これらを作曲したのは、やはりというべきか、ニジガクの動画に度々姿を現していた高咲侑さんです。そう、あのSIFでピアノを弾いていた生徒です。幕間映像でメンバーたちにインタビューをしていたのを見ても、本当にスクールアイドルが好きなのが伝わります。何しろスクールアイドル好きが高じて作曲を始め、このライブの立役者になってしまったのですから、その愛は本物です。今回のライブで気づいたメンバーたちの新しい魅力も、高咲さんが発掘したものだと思うと、全部納得がいきます。
その高咲さんが客席後方から現れ、ステージに上がりました。「向いてないとか、遅いとか関係ない」「同好会はずっとあなたと一緒にいる」。高咲さんと、上原さんの言葉です。何度思い出しても、救われる思いでいっぱいです。『Future Parade』は、私たち一人一人に、「ひとりじゃない」と語りかけてくれる、同好会全員の想いが重なった歌でした。一人でもやりたいことに全力で取り組んできたメンバーたちだからこそ、その言葉の持つ力が強くなるのです。高咲さんは今回も生演奏で一緒のステージを作っていました。
この新しい年は、あの場にいた8,000人の一人一人が、夢の種を育てる年になると思います。
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2. 思いもよらないプレゼント
だいぶ字数を使ってしまいましたが、ロールプレイはここまでにして、総括に入りたいと思います。
『ラブライブ!』シリーズのアニメは最終回1話前で一旦まとまって、それを最終回で表現するという構成が多いですが、前回までに「大きすぎる想いを支える方法は、共有すること」という流れがありました。自分のやりたいことを一人で表現し始めたのが一期でしたが、そこから新たに同好会に加入したり、ユニットを組んだりと、少しずつ重なり合いの部分が大きくなってきました。そして、「夢を追いかけてる人を応援で着たら」という、最初は侑の中にあった漠然とした夢が、今は13人全員が新しい夢の種を持つ人々の背中を押す側になったことで、信じられないほど大きな力になりました。全員が一つのステージに立っているのは、その思いが完璧に重なったからです。
同時に、侑に芽生えた「音楽を通して何かを表現したい」という夢は、全曲侑が作ったライブが実現することで一つの形として叶いました。しかし、それだけではありません。侑はこれだけスクールアイドルの近くにいながら、スクールアイドルになりたいと思ったことは一度もなかったのですが、作曲で様々な想いを表現しているうちに、スクールアイドルと同じことをしていたのです。見ている人に元気と勇気を与え、誰かの心に夢の種を蒔き、侑のことが好きな人を同好会の内外に増やしました。
1話の感想で「ライバルから始まった物語が仲間に結実する」と書きましたが、まさにその通りになりました。形だけ見れば嵐珠が侑の同好会に入ったようで、薫子との出会いや、歩夢との一件を経て、応援が力になることに気づいた侑も変わりました。同好会のスクールアイドルたちのやり方も、思いを貫くからこそ形を変え、ユニットに、グループにと進化しました。
はじまり
「気づけば夢以上のものを叶えていた」のは、μ'sもそうだったかもしれません。廃校を阻止して、一度は見失いかけた夢を再び見つけ、全世界にスクールアイドルの種を蒔いたのがμ'sです。Aqoursの場合は、最大の夢こそ叶いませんでしたが、歩みを止めなかったことで、いつの間にか大切なものがいくつもできていました。最初に想像した形からは思いもよらない景色が見られるのが、『ラブライブ!』シリーズすべてに共通する魅力です。
3. 究極のお祭り最終回
13話は本編がほぼ丸々ライブなので、劇の進行がほとんどありません。起承転結の「結」に特化しているイメージです。それだけに、ファンの応援メッセージも、『虹ヶ咲』を作ってきたクリエイターたちの作品も、今までに登場してスクールアイドルをスクールアイドルたらしめたたくさんのキャラクターたちも、全部が詰め込まれています。スクールアイドル同好会よろしく、作り手側が「みんな、ありがとう!」を伝えるためのお祭り回だったということです。
だとすると、『アニガサキ』スタッフの一人一人が、スクールアイドルだということにならないでしょうか。彼ら彼女らもまた、自由に何でも盛り込んだアニメを制作し、見ている人に元気と勇気を与え、誰かの心に夢の種を蒔き、これだけファンに愛されたのです。なぜ1回1回をキャラクターのように育ててきた (度々言ってきた「キャラクター作風仮説」) のかといえば、スクールアイドルの持ち味を"全身"を使って表現するために他なりません。会社やフリーで仕事をしているクリエイターは「スクール」ではないかもしれませんが、虹ヶ咲学園という学校を、自分たちのもののように愛している方々ですから、やはりスクールアイドルです。
4. そして……
最後のパートでは、同好会の新しい日常が描かれます。新しい夢、繋がった大好き、交わる個性―—これこそ、かすみが夢見た自由のある場所です。かわいい椅子を買う提案は却下されてしまいましたが、かすみが一番かわいくいられる場所は、ここです。
その中で、せつ菜が口にしていた『紅蓮の剣姫』のアニメの話が気になります。『コッペパン総選挙』・『にゃんがさき』というエイプリルフール企画は、両方アニメ内で取り入れられました。一方、今年のエイプリルフールは『紅蓮の剣姫』の「映画化」。アニメ化ではありません。ということは、「映画化」するのは実際にはもしかして―—。
『サンシャイン!!』では『幻日のヨハネ』のアニメ化が一字一句違わず実現するという「珍事」が起きてしまったからには、期待しても良いのでしょうか? 『スクスタ』のキャラだと夏川マイが未登場ですし、R3BIRTHの曲もまだです。夢を追いかけながら待つことができたら、何かが変わる気がします。
7月からは、間髪を入れずに*3『ラブライブ! スーパースター!!』第2期が始まります。もちろん、こちらも感想を書きたいと思います。
"夢の虹" = "Dream Rainbow"が架かる2期のキービジュアルを眺めながら、新しい物語の到来を待っています。