『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(以下、アニガサキ) の、待望の2期が始まりました。『普門寺飛優のひゅーまにずむ』としても、始まりの記事に関係の深い新メンバーたちがアニメに登場するということで、これを取り上げない手はありません。
第1話は、まさにその中心人物・
2期のキャッチコピーは「響け! ときめき――。」と「『ライバル』だけど、『仲間』!!」です。今回はその「『ライバル』だけど、『仲間』!!」に注目し、物語の始まりを見届けました。
1. 第2回スクールアイドルフェスティバル
1期の最後で開催が予告された、第2回スクールアイドルフェスティバル (以下、SIF) の予告映像から本編が始まります。「観るアニメを間違えたかな?」と思ってしまう、バトル物の世界観の映像です。
映像の中では、1期OP映像に登場した、黒いスーツに身を包んだ同好会メンバーが登場します。そして、モノクロだった世界に、それぞれの「個性」で様々な攻撃を放ち、世界に色を付けていきます。これはスクールアイドルのライブで侑が見る景色を、そのまま映像にしたような作品です。それをたくさんの人に共有できれば、よりたくさんの人が侑のようにトキメキ、侑のように自分の夢を見つけることができるのではないでしょうか。
2. 颯爽登場! 鐘嵐珠
その映像は、虹ヶ咲学園のオープンキャンパスで使用されることになりますが、かすみのミス*1により、没データが流れてしまいます。呆気にとられ、離れていく中学生たち*2。そこに颯爽と現れ、中学生たちをたった一人で釘付けにしたのが、香港からの留学生、鐘嵐珠でした。
冒頭でもう一人の留学生、ミア・テイラーと共に羽田空港に降り立ち、幼馴染である三船栞子の手引きでスクールアイドル同好会に接近します。そこで同好会の現状を聞くや否や、早速訪れた同好会のピンチをいきなり救ってしまいました。
ただし、「アタシが出るスクールアイドルフェスティバルに、ケチがつくのをただ見ているわけにはいかないわ」という発言には注意が必要です。この時点で同好会よりもSIF自体への関心の方が高いことがわかるからです。すでに、侑が語る同好会のあり方には疑念の表情を浮かべているのです。虹ヶ咲に留学したのも、SIFのホスト校だからに他なりません。
2. 1. Eutopia
嵐珠のソロ曲『Eutopia』は、これぞ説明不要のパフォーマンスというものでした。まさに次世代最強スクールアイドルです。
ここでは水や水槽のモチーフが多用されていますが、これは何を意味しているのでしょうか。『アニガサキ』においては、1期OP映像で水に足を浸している侑、そしてサビの水没した虹ヶ咲学園校舎が挙げられます。また、1期3話の『DIVE!』でも水に潜っていくせつ菜が描かれました。これらはどちらも、広い海の水でした。しかし、『Eutopia』では水は水槽に閉じ込められ、嵐珠を映しています。中には、観賞用の魚がいます。嵐珠が目指すアイドルとファンの関係性が、広がりを持たず完結していることを表しているのかもしれません。
2. 2. 絶対的な「夢」
嵐珠の夢は、誰よりも人々を夢中にさせることです。そしてその一部は、少なくともあのオープンキャンパスという場所においては、既に実現しています。「Eutopia」という、実現可能な理想郷を指す曲名と一致しています。
しかし、嵐珠は、最強であるためには支え合いや助け合いは不要だと考えています。
3. 「ライバル」から始まる2期
嵐珠の挑戦的な物言いに対し、侑、それに同好会の面々は、自分たちのやり方で夢を叶えることをはっきりと表明します。どのように夢を叶えるのか、なぜ同好会に入らないのかなどが、とにかくはっきりと言葉にされることがとても気持ち良いと思います。嵐珠にとっては自分のやり方と違うから同好会には入らず、侑にとってはそれも同好会が嵐珠を拒絶する理由にはならない、というような気持ち良い対立関係を、「敵」とは言わず「ライバル」といいます。「好敵手」の「好」の部分ですね。
ここで生まれた嵐珠と侑の対立関係が綺麗なのも気持ち良さの一つです。
・嵐珠……「やりたいこと」が先にある。だから虹ヶ咲。最後に勝つのはただ一人。
・侑……「やりたいこと」が見つかる。だから虹ヶ咲。最後はその夢がみんなに広がっていく。
そもそも同好会がソロ活動をしているのは、それぞれのやりたいことが違うからです。しかし、ソロ活動ならソロでやればよいのではないかという疑問は、至って自然なものなのではないでしょうか。侑の夢に至ってはスクールアイドルですらないのですから。大阪ドームに集まった5万人をみなスクールアイドルと言ってしまう言説には、疑問符がついても仕方がないはずです。
それでも同好会は、それを逸脱とは見做しません。別々の夢をもつメンバーたちが一つの場所で活動することに一番拘っているのは、互いが夢を叶えるために、違う夢や大好きが集まっていることが必要だという答えに最初に辿り着いたかすみでした。1期の答えは揺るがされることなく、だからこそ同好会に入らない嵐珠に自分たちのやり方を表明することができました。一方で、現在の同好会は、互いを支え合うという形でその集合を実現していますが、それだけが同好会が集まっている理由なのかということが、嵐珠によって突き付けられた問題といえるでしょう。
ここで、2期のキャッチコピーの1つが、「『ライバル』だけど、『仲間』!!」だったことを思い出してください。1期の「『仲間』で『ライバル』!?」と対になるこのフレーズ*3ですが、2期が「ライバル」から始まったということは、最後にはそれが「仲間」に結実する物語が描かれるのではないでしょうか。特に、侑と嵐珠が仲間になるまでが、2期の主題になると思います。
4. 高咲侑の「夢への一歩」*4
音楽科への転科に成功し、夢への一歩を歩み出した侑ですが、早速苦戦しています。最初の小テストでは早速赤点でした。周りは1年4ヶ月も音楽を専門に学んでいるのですから当然ではあります。それが自分にとって本当にやりたいことなので、侑は弱音を吐きません。しかし、果たして本当に大丈夫でしょうか?
私たちの中にも、『アニガサキ』1期や、昨年夏からのライブラッシュに「あてられて」、自分の中にある「夢」のようなものに目覚めた人は多いと思います。私には、叶えたい、充実させたいことが数えきれないほどあります。ちょうど侑が音楽に目覚めつつ、スクールアイドルの応援をやめていないようにです。しかし、本当にちゃんと向き合えているのかには疑問が残ります。
夢と夢が繋がり、重なる中、しかし、自分の夢には浮かれないで真剣に向き合わなければなりません。「同好会」というやり方の可能性はどこまでなのでしょうか? それとも、嵐珠の言うように、同好会で叶えられない夢というものもあるのでしょうか?
私は、侑の夢見る「やり方」には、「虹ヶ咲学園」以外も、「スクールアイドル」以外も、「同好会」以外も包含されていると捉えています。視聴者まで巻き込むほどの広がりは、私たちにも夢と向き合う時間を与えてくれているかもしれません。