普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

リュウモン頑張る! 頑張る! ~ウルトラマンデッカー感想週報⑥『地底怪獣現わる! 現わる!』~

「現わる」なんてレベルじゃないぞ、これは……
 (『ウルトラマンデッカー』第6話『地底怪獣現わる! 現わる!』より/©円谷プロダクション/配信URL https://www.youtube.com/watch?v=I4dja7eU4Mc)

 

 2週間ぶりの新作です。大事なことは2回言うというのは、よくあるお約束です。ということは、今回は「現わる」が大事なことであることがわかります。さて、その意味するものとはなんだったのでしょうか?

まっすぐの天才

carat8008.hateblo.jp

 

1. ホッタとマルゥル

 今回のストーリーに入る前に、前回の総集編のことに触れておきます。

 登場したのは、『トリガー』のスピンオフ、『ナースデッセイ開発秘話』に登場した、ホッタ マサミチメトロン星人マルゥルでした。ホッタは『トリガー』24話にも少し顔を出していましたが、総集編とはいえ、地上波でこの2人の絡みをまるまる一話分見られるとは思っていませんでした。10年の歳月が経ち、ホッタに白髪が増えていたのが印象的でしたね。

 マルゥルは、『トリガー』本編、『エピソードZ』のあと、火星に行ったGUTS-SELECTメンバーとは別行動をとり、地球に残っていました。このことは、ウルトラマンクロニクルD』で語られています。それゆえに、スフィアによる分断を受けず、『デッカー』の時代でも地球で任務にあたることができていたのです。ウルトラマン非放送期の総集編番組は、2019年の『ニュージェネレーションクロニクル』でもストーリー仕立てとなっていますが、本編と直接ストーリーが繋がったのは今回が初めてです。『トリガー』と『デッカー』が同一世界線だからこその芸当です。

 そして今回、そんなTPU技術部特務三課が腕を振るったと思われる技術が日の目を見ました。『トリガー』ではアブソリューティアンの力を使っていたマキシマナースキャノンをさらに強化した「ネオマキシマナースキャノン」です。その威力は3,200 mもの地盤を貫通し、地下のツインテールの大群を一掃するほどでした。

 『ダイナ』のネオマキシマ砲は、登場時にひと悶着ありました*1。今のところそのようなことは起こっていませんが、この力が人類側、あるいはウルトラマンに向けられれば、ひとたまりもありません。強大な力の扱いというものは、難しいはずなのですが……。

 

2. 地底怪獣大乱舞

 今回のサブタイトルは、『地底怪獣現わる! 現わる!』。2回繰り返した理由は、それはもうひたすら地底怪獣が出現するからです。予告された登場怪獣はパゴスでした。『タイガ』以降毎年のTVシリーズに加え、『シン・ウルトラマン』にも登場する、「令和皆勤怪獣」です。ところが、地底からさらにグドンが出現し、パゴスと戦っていたウルトラマンデッカーを地下空間に連れ去ってしまいます。さらに、地底にはテレスドンと、グドンが食糧にしていると思われるツインテールの群れがおり、デッカー1人ではとても太刀打ちできない状態になっていました。

 地底といえば怪獣の住処なのは、大昔からの定番だと思います。今回の登場怪獣の肩書もすべて「地底怪獣」になっていました*2。1話でこれほどの数の怪獣が大暴れしてくれると、単純にわくわくします。ツインテールを食べるグドン、地下の超臨界メタルを食べるパゴスなど、怪獣の生態も部分的に描写され、地底に人間の知らない生態系があることが示唆されました。そして、知らないがゆえに人間は地下資源を利用しようとし、これらの怪獣軍団の怒りに触れてしまうのです。

 今回登場した怪獣はこれだけではありません。デッカーも新たなディメンションカード怪獣・アギラを召喚しました。『メビウス』にも登場したミクラスや『Z』で特空機に抜擢されたウインダムとは異なり、TVシリーズでは『セブン』以来初の登場となります*3

 

3. 見つめる天才・リュウモンの完璧主義

 リュウモンは、「人の命を救う仕事にミスは許されない」という意味のほぼ同じ台詞を、怪獣軍団との戦いの前後で2回言っていました。

 リュウモンが失敗は許されないと根を詰める様子は、2話でも描かれていました。カナタの負傷は訓練の失敗であると主張し、訓練を中止しようとしていたときです。ところが、今回はリュウモンが任務中に負傷してしまいます。幸い軽傷だったとはいえ、大事を取って休むように言われたその日に、トレーニングを再開していました。

 自分の許されないミスを取り返すために、次は失敗しないように鍛錬するリュウモンを、カナタは理解しきれずにいました。リュウモンはというと、向こう見ずなカナタのことを理解していないかと思いきや、そうではありませんでした。これが「見つめる天才」リュウモンの強みです。リュウモンはカナタのこともよく見ていて、影で努力していることを知っていたのです。とはいえ、カナタは自分の直感に従って、本人曰く「適当に」やっていたことではありました。怪獣軍団との戦いを通して、カナタはリュウモンが有言実行の男であることを知ったので、リュウモンの語る同じ台詞の聞こえ方も、だいぶ違うものになったのです。

 ムラホシ隊長はイチカ「まっすぐの天才」と呼んだのに対し、リュウモンを「見つめる天才」と呼びました。それと同時に、その持ち味が彼らにとって弱点になり得ることも冷静に指摘しました。想定外のことしか起きない怪獣との戦いにおいて、いつでも完璧であり続けることは難しいので、それを忘れないことも大人として責任を持った褒め方だったと言えるでしょう。それでも、今回リュウモンは持ち味を生かして作戦を成功させ、人々の命を救うことができたので、失敗を糧にひとつ成長できたのではないでしょうか。

 ところで、「まっすぐ」と「見つめる」を繋げると、このようなフレーズに思い当たります。

「どこか哀しげな 輝き秘めた目が まっすぐ見つめた 果てない宙の下」

 前作『トリガー』後半EDテーマ『明日見る者たち』の歌い出しの歌詞です。そういえば、カナタの苗字は「アスミ」。1話の煎餅屋の屋号からすると、漢字表記も「明日見」です。この歌は、『トリガー』の歌でありながら、未来の天才たちを予言したうただったのかもしれません。

*1:私の最推し怪獣であるデスフェイサーのエピソード

*2:ツインテールは本来「古代怪獣」だが、今回は変更されていた

*3:映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説』には登場。また、擬人化アニメである『怪獣娘』では主人公