「夢」にも、いろいろあります。
現実にはない、あらぬものが見えてしまうのも「夢」です。
Nightmare
その一方で、憧れに近づいた自分の姿を空想するのも、また「夢」といいます。
ショートアニメで見られるとは思っていなかった、「夢」の話です。
1. 島を飛び出したトキメキ
朝香果林の出身地は、八丈島です。『スーパースター!!』では複数の話でSunny Passionの本拠地である神津島の様子が描かれましたが、『虹ヶ咲』に関しては『スクスタ』を含めて八丈島の様子が描かれることはありませんでした。果林の幼少期は、テキストでは言及されつつも、実際には謎に包まれていたのです。それが、今回初めてシンプルな形できちんと整理されました。
のびのびと砂浜を走り回っていた活発な少女が、よく見ていたファッション雑誌のモデルに憧れ、島を飛び出して東京にやってきた。ありふれていて、だからこそ力強い夢追い人の物語です。ラブライブ! シリーズにおいては、それにスクールアイドルが介在しないのが逆に珍しいくらいですが、夢というものはこのくらいシンプルでよいということだと思います。それに後押しであったり、出会いであったり、様々な要素が絡むことはありますが、ただ「こうありたい」という願望であったり、「自分にできるかも」という希望であったり、果林が抱いていた夢はシンプルでした。シンプルであればあるほど、憧れに向かってまっすぐ行動するのに強さが必要だと思います。果林は、小さい頃を振り返り、「やんちゃだった」と述懐しています。幼い頃からのびのびとやりたいことをやれていたからこそ、夢に対する行動力も生まれたのではないでしょうか。
その半面、アニメ1期でスクールアイドルに憧れたときには、二の足を踏んでいたということは、幼い頃のエピソードとは対照的です。この時の果林は、モデルを夢見て読者モデルとして活動を積み重ね、夢を追いかける大変さや、思うようにいかない苦しさも知ってしまっていたのでしょう。幼い頃の果林が知っている痛みといえば、走って転んだ擦り傷くらいだったと想像できます。すっかり「大人」になってしまった果林が、幼い頃と同じように自由に走れるように背中を押してくれたのがエマでした。エマも、小さい頃はアルプスの山を走り回り、自分が寒さと孤独に震えた経験から、スクールアイドルとして誰かの心を温めたいと祖国を飛び出してきた似た者同士です。似ているようで違う、違うようで似ている2人の心温まるエピソードを思い出しました。
似た色の夢と出会って、ちょっと臆病なまま、それを振り切る情熱も思い出して、果林が憧れていた大人のお姉さんになれたのは、皆様のよく知る通りです。
2. 夢を追いかけてる人を、応援できたら
思わぬところからアニメ1期PVの名台詞が飛び出しました。
ダイバーシティ大階段でのライブを見てせつ菜に一目惚れした侑が、せつ菜を応援しようとしたものの思うようにいかなかったときの台詞です。
今回、この発言をしたのは栞子でした。
侑と栞子も、ある意味で似た者同士です。『スクスタ』に目を転じれば、「あなた」が栞子の生徒会の手助けをしていたのを思い出します。「あなた」/侑は、誰かの夢を自分の夢のように感じて、そのために一生懸命になれる人です。『スクスタ』では生徒会の仕事への適性が高く、栞子に生徒会に誘われていました。
その一方で、自分自身の夢に対しては、どこまでもまっすぐなところも共通しています。それは時として、幼馴染の感情を屈折させてしまうほどです*1。
今回、栞子は、学園の生徒たちの夢や情熱はどれも素晴らしいと語っていました。生徒会長として、誰かの夢を贔屓するわけにはいかず、皆を応援したいのだと思います。ということは、侑の「あの名台詞」も、形を変えて栞子にも当てはまるのかもしれませんね……?
*1:1期11話・2期7話