普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

一つも悔いは残さない ~にじよん あにめーしょん感想週報⑩『かすみとせつ菜とドッキリ』~

3分でも、全部叶える
 (『にじよん あにめーしょん』第10話『かすみとせつ菜とドッキリ』より/©プロジェクトラブライブ!にじよん あにめーしょん/配信URL https://www.youtube.com/watch?v=-qyr-xFpch0)


 「今しか出来ないないないないないことがあるんだ」

 今回は流れなかった主題歌『わちゅごなどぅー』ですが、その通りに作られていたのが10話でした。

 楠木ともりさんのせつ菜役としての最終作品の役割を帯びた本作。やりたいことは我慢せず、諦めず、実現するのが『虹ヶ咲』です。

 

今回の狂言回しはこんな子

carat8008.hateblo.jp

 

1. せつ菜と楠木ともりさんとアニメ

 ラブライブ! シリーズ史上初のショートアニメで、初めてのライブパートが入りました。ライブは、今までシリーズアニメでずっと大事にされてきた要素で、それは3分あまりのショートアニメでも変わりはなかったのです。

 それも、ただライブしただけではありません。停電で音響機材を失ってしまったせつ菜は、ペンライトの赤い光に照らされながら、自分の力だけで歌を歌い始めます。要するにアカペラでライブを始めたのですが、実は「せつ菜のアカペラ」という概念は『虹ヶ咲』に元々存在していました。

 『スクスタ』メインストーリー24章では、虹ヶ咲のスクールアイドルの頂点を決めるトーナメント戦が行われました。せつ菜は愛と2回戦を戦いましたが、その中でせつ菜は突然予定になかったアカペラライブを行い、完璧なパフォーマンスをこなした愛を下しました。ところが、このストーリーでは一切ライブの様子が描かれません。テキストですら描写がないので、その様子を窺い知ることすらできませんでした。

 同じく『スクスタ』で不消化だったものとして、嵐珠の圧倒的パフォーマンスがあります。実のところ、シナリオの粗よりも彼女たちの魅力が伝わりきらないところが『スクスタ』批判の主要な一因としてあると思うのですが、これに関してはアニメ2期1話が凄まじい形で救済していきました。リアルの法元明菜さんの演技も、持ち前のパワフルさと愛の強さで、その体現として不足のないものでした。

 私は、せつ菜のアカペラライブも、いつかライブで実現するものと信じていました。しかし、それはなかなか実現せず、そうしているうちにせつ菜である楠木ともりさんの降板が決まってしまいました。楠木さんのせつ菜としての姿は、先日の『A・ZU・NA LAGOON』で十二分に心に焼き付けることができましたが、全てが実現したわけではなく、心残りを「もしかしたら2代目が実現してくれるかもしれない」という期待に変えて過ごしていました。

 それが、アニメで、それもまさかの『にじよん』で実現したのです。

 『にじよん』は、3分アニメ*1だからできないということはない、4頭身だからライブはやらないという言い訳はしないということを教えてくれました。リアルができなかったことを、アニメが叶えたのです。ラブライブ! シリーズでよく議論を呼ぶ「アニメとリアルの距離感」の、ニジガクとしての答えがここにあると思います。優木せつ菜がいついかなるときでもスクールアイドル・優木せつ菜であるように、「はんぱな気持ちで挑みたくはない」、ショートアニメの「本気」を見せてもらえました。

 

2. ドッキリが暴く表情

 ラブライブ!シリーズでドッキリと言えば、先日『芸能人が本気で考えた! ドッキリGP』にLiella! が2回出演しました (「ドッキリエラ」)。私は1回目だけ観ました。2回目はフジテレビの展望台『はちたま』でLiella! がくす玉を割ると、中から大量のBlattodea*2のおもちゃが出てくるというもので、物議を醸しましたが、近頃ネットを騒がせているように虫の話題というものは何かとセンシティブなので、無理もないかと思います。

 さて、私たちはドッキリを見て、芸能人が悪戯に対して取る様々なリアクションを取るのを楽しんでいます。リアクションに定評のある芸人も、普段は笑顔を崩さないアイドルも、突然の事態や嘘の出来事で、平常心や相方との絆を試されます。

 かすみがせつ菜に仕掛けようとしたドッキリも、せつ菜の意外な表情を見ようとしてのものです。あるいは、普段他のメンバーに仕掛けている悪戯も、仲間の表情を自分の力で変えさせるという試みなのかもしれません。だから怪文書と称してファンレターを贈ってもよいのです。かすみの目標は自分に自信を持つことなのを考えると、自分を変えるために周りから変えようとするのは、初期設定のような本当に悪質な悪戯はしなくなっても、ややアグレッシブな考え方に感じられます。

 ところが、せつ菜には「意外な表情」が存在しません。客席にお化けを用意しようと、ステージを異世界に変えようと、わくわくする顔が予想できてしまいます。意外な表情でいえば、愛が指摘するようにかすみのほうがよりドッキリの仕掛け甲斐があるように思えます。実際ドッキリの打ち合わせ中に突然せつ菜が現れ、取り繕うためにせつ菜に「告白」してしまい、自分で自分に逆ドッキリを仕掛けたようになってしまいました。

 ここで、ドッキリのもう一つの側面を見ていくために、もう一度「ドッキリエラ」を振り返ります。一度目は葉月恋役・青山なぎささんが、水中で息を止める企画かと思いきや、顔を上げたら目の前にニホンザルがいるというものでした。青山さんは驚きのけぞりながらもふらつくことなく「綺麗に」後ろへ飛び退き、お手本のようなリアクションを見せてくれました。反応が薄くても面白くありませんが、その反応の中に垣間見える「プロ意識」こそ、私たちがドッキリに求めるもう一つのものかもしれません。せつ菜が直面したのはドッキリではなく本当の不測の事態でしたが、せつ菜や楠木さんがこれまでにも何度も見せてきたのもこの「プロ意識」だったと言えるでしょう。

*1:今回はEDの代わりにライブパートをやったので、210秒の尺がある

*2:婉曲のため、学名で表記