ほぼ無観客で開催された前代未聞の東京2020オリンピックが閉幕しました。さまざまに問題はありますが、なんとか信頼を回復できるようにして、日本でもう一度オリンピックをやってほしい、そう思わせるほどに選手の皆様の活躍は素晴らしかったと思います。
一方で、その間小休止していた『ラブライブ! スーパースター!!』には、観客がいると思うように歌えない少女、澁谷かのんがいましたね。第3話はかのんと可可の初ライブ。その運命は果たしてどうなったのか……。
前回
1. 結成! 夢の "クーカー"!?
3週間引っ張った最大の謎、サブタイトルの「クーカー」とは何なのか。それは、可可が独断で決めたグループ名でした。可可の「ク」とかのんの「か」から「クーカー」。μ'sやAqoursも色々なアイデアが浮かんでは消え、結局後にメンバーになる謎の人物が与えた名前が付けられましたが、勝手につけてしまうあたりに可可の積極性を感じますね。
そんな乗り気の可可をよそに、かのんの気持ちは乗っていません。1話で街中で歌えたとはいえ、本番のステージで自信をもって歌うのは難しいことです。プレッシャーが先に来て、とうとう練習でも声が出なくなってしまいます。千砂都もたこ焼き屋で人に慣れさせようとしたり尽力しますが、かのんは自分が可可の足手まといになっているのではないかと自分を追い詰めます。自分が歌えないかもしれないし、たとえ歌えたとしてもフェスに勝てず、スクールアイドルを継続できないかもしれない事情 (後述) が発生してしまったからです。
「私じゃなかったら可可ちゃんもっと楽だったろうなあ」……しかし、可可には「私じゃない」選択肢など、最初からなかったのです。かのんと可可は、お互いの夢を叶えるために歩き出しました。可可の夢は、今や「かのんとスクールアイドルをすること」になっていたのです。かのんの歌声に惚れた気持ちは本物で、歌えないけれど本当は歌いたいかのんが歌えるまで一緒に頑張ることが可可の使命なのだとすれば、かのんの使命は可可の夢を叶えること。「クーカー」という拍子抜けしたようなユニット名*1には、かのんと一緒という可可の願いが込められていたのです。
ところで、前回から仲間になりたそうにこちらを見ている千砂都。学科の違い、かのんの心の壁を越え、「クーカー」がどうやって「Liella!」になるのかがこれからの見どころです。
2. 衝撃! ”サニーパッション” 参戦!
前回モブの会話に登場していたスクールアイドル「サニパ」。その正体が聖澤悠奈と柊摩央の2人組、「サニーパッション」であることが判明しました*2。前年の東京代表 (言うまでもなく『ラブライブ!』のことでしょう) であり、東京は東京でも神津島出身のスクールアイドルであることが明かされました。可可が日本に来たきっかけになったグループでもあり、すなわち2人とも2年生か3年生です。
結果から先に書くと、このイベントで優勝したのはサニパ。クーカーは新人特別賞こそ受賞しますが、優勝を逃します。つい2週間ほど前にアイドルを始めた初心者と『ラブライブ!』大会経験者では当然ですが……。ところで、歴代ライバルであるA-RISEとSaint Snowは、μ'sとAqoursとの直接対決においてそれぞれ1回しか勝利を収めていません。A-RISEは2期3話の第2回『ラブライブ!』予備予選で1位通過しますが、μ'sも予選を4位通過したので、正直あまり負けた感はありません。むしろ、元々大きな実力差がありながら同じ土俵に立てたという嬉しいシーンですし、地区予選での対決ではμ'sが勝利を収めます。Saint Snowは1期7・8話の『TOKYO SCHOOL IDOL WORLD』で、Aqoursの30位 (0票最下位) に対して9位と、一応圧勝しています。しかし、Saint Snowにとっても納得いく結果ではなかった上、2期の大会では予選敗退し、直接対決の機会すら逃してしまいます*3。こう考えると初登場で1位を獲得してクーカーを下したサニパが相当の実力者に見えます。
ところで、東京島嶼部出身のスクールアイドルは歴代にもう1人います。八丈島出身の朝香果林です。ちなみに神津島と八丈島は船便が違うため、聖地巡礼でハシゴすることはあまり現実的ではありません。余談ですが神津島へは伊豆半島から『フェリーあぜりあ』という船で訪れることもできます。それと、沼津を舞台とした『ラブライブ! サンシャイン!!』は、元々伊豆諸島を舞台にする構想があったとも聞きます。まだ風景の描写が一つもありませんが、いつの間にか『ラブライブ!』シリーズと伊豆諸島は切っても切れない関係になっていましたね。
3. 心の光に包まれて
さて、『代々木スクールアイドルフェスティバル』本番。ステージに立って初めて恐怖を覚える可可を、かのんは助けることができません。可可がいるから自分も歌えるかもしれない、しかしその可可に依って立てなくなったら、どうすればいいのかわからなくなってしまいます。
そこを突然襲った停電。その原因はすみれが配線に足を引っかけてしまったというお粗末なものでしたが……。2人が暗闇の中で見たものは、瞬く星のような観客のサイリウムでした。
初ライブで観客の視線にどう立ち向かうか。『ラブライブ!』では観客を野菜だと思え、という謎の提案がありました。その観客がいなかったのが『ラブライブ!』の厳しいところですが……。かのんの歌を聴く人は、合唱の審査員であったり、入試の面接官であったり、かのんを評価しようとする人々でした。聴き手との間には、決定的な上下関係、言い換えれば生殺与奪の権が存在します。
しかし、フェスの観客は違います。観客は楽しみを求めて、スクールアイドルと一緒にステージを作る存在。『Aqours 3rd LoveLive! Tour』で、高槻かなこさんはそれを「命の灯火」と表現していました。「ひとりじゃないから」かのんは可可の手を握ります。「可可がいるから歌える」というのも少し違いました。初めてのステージが成功するように祈っているのは可可だけではなかったのです。観ている人の存在が初めて力になった瞬間でした。
ただ歌えただけではない、ライブの成功。1位になれなかったことでもしスクールアイドルが継続できなくても、後悔しないとかのんは言います。音楽科とのわだかまりも、生徒会長との戦いもまだまだ一筋縄ではいきませんが、着実に変化が表れてきたと思います。クーカーの名前を最初に呼んだのも、率先してサイリウムを振ったのも千砂都。心の壁は作っていても、秘められた本当の気持ちはもう同じだと思います。