普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

【ネタバレ注意】「私」と「私」が奏でるユニゾン Liella! 2nd LoveLive! 横浜公演Day1 全曲感想

 2022年3月12日 (土) に、ぴあアリーナMMで開催された『Liella! 2nd LoveLive! ~What a Wonderful Dream!!~』横浜公演Day1に参加してきました。私にとって、3週連続のライブ参戦となりました。今回は、曲自体の解釈も多く交えつつ、この公演のレポートをお届けいたします

 なお、この公演は名古屋公演、大阪公演と続きます。これらの公演に前情報なしで臨みたい方は、公演日まで読むのをお控えください。

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ぴあアリーナMM

 

1. Liella! と同じ5人で

 Liella! といえば5人組ですが、私にも大切な4人がいます。今までにもそのメンバーとラブライブ! のイベントやライブに一緒に参加したことがありましたが、今回は昨年秋に5人になってから初めて全員が揃ってライブに参加することになりました。普段は北海道から兵庫県まで散らばって住んでいるので、なかなか会うことができませんでした。

 そこで、私の提案で、1期8話でLiella!が5人になって初めて組んだ円陣を再現することにしました。すると、メンバーの一人が、『Wish Song』衣装の手袋を制作してきてくれました。

 こうして、私たち5人も新しいスタートを切り、ぴあアリーナMMへ入場したのです。

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私たち5人の円陣

2. ぴあアリーナMM

 ぴあアリーナMMは、2020年にオープンした新しいライブイベント専用のアリーナです。私の席はアリーナ席でしたが、アリーナ席といえばパイプ椅子という常識に反し、常設の椅子が並んでいました。常設なので座り心地も良く、肘掛けやドリンクホルダーもついていました。ライブ中のスタンディングを考えると、肘掛けの出番はなさそうですが、私の席は通路の隣なので一定の役に立ちました。

 座席の左前、わずか10 m程度のところに、センターステージが見えました。ニジガクのお披露目を含め、9回目の現地ライブ参戦ですが、ここまで近かったことはありません。

 メインステージは、白い幕で覆われていました。これも今まではなかったパターンです。

 

3. メンバーからキャストへ、引き継がれるプロローグ

 お手洗いに行っていて着席がギリギリになってしまったのですが、着席するとほどなくして両脇のモニターに『Starlight Prologue』の映像が流れ始めました。既にラブライブレードを点灯し、準備を済ませていた観客席では、1stライブでも再現された5色の光の道が生み出されていました。この時点では、観客席ではライブで披露されるこの曲の予習が目的の映像だろうという声が聞かれました。しかし、この映像の真意はそこにはありませんでした

 比較的短いオープニング映像が流れ、幕の向こう側にいるキャストの5人がシルエットで映されました。次の瞬間、幕は取り払われました。Liella! の登場です。

 最初の曲は5人によるオリジナル版の『GOING UP』です。アニメ1期準拠の1stライブでは、この曲はストーリー冒頭に位置づけられ、かのんのソロ曲になっていました。つまり、5人ではこの曲は初披露となりました。ここが、2ndライブのストーリーの、新たな始まりになります。

 ここから一転してアップテンポな『Dancing Heart La-Pa-Pa-Pa!』がかかりました。この曲はLiella! で最初に好きになった曲なので、現地で聴けて大満足でした。Liella! のライブは1stから一度も声援が解禁されたことはないにもかかわらず、いつか一緒に声を合わせて盛り上がれること間違いなしの曲が少なくありません。

 MCでは、ラブライブ! シリーズでいつもそうしているように客席と配信に手を振って呼びかけてくれました。それに加えて今回は、ライブビューイング (LV) が約2年ぶりに復活しています。Liella! にとってはもちろん初です。今回は映画館ではなく、池袋にあるライブカフェスペース『Mixalive TOKYO』での観覧となっていました。最後のMCで「ライブビューイング」を岬なこさんが盛大に噛んでしまいましたが、言い慣れない言葉だと考えれば仕方ありません (笑)。

 MC後は表題曲『What a Wonderful Dream!!』へ続きます。MCでも今回のライブのテーマは「夢」だと明言されていた通り、夢の中で空を飛ぶような曲調の歌です。「なんでできないのかな その気持ちが鍵さ」のところでは、かのん役・伊達さゆりさんと、他の4人に分かれるフォーメーションになります。今回のライブでは、このような「1人と4人」のフォーメーションを何度か見かけました。まるで1人の想いや挑戦を、他の4人が支えているようでした。

 この後は『1. 2. 3!』でした。1stライブでは、かのん・可可・千砂都の3人で歌っていたのに対し、今回はかのん・すみれ・恋が元気いっぱいに歌ってくれました。この曲ではキャストがセンターステージまでやってきました。伊達さゆりさん・ペイトン尚未さん・青山なぎささんの3人が、信じられないくらい近くに現れました。今までのライブでは、遠くのキャストを頑張って見ている状態でしたが、ここまで来ると「迎えに来てくれた」レベルの近さです。何より家のPCの画面で配信を見るより大きく見えるのですから、「存在している」ということに目が眩んでしまいそうでした。これが「光」というものか、とまさに夢心地になってしまいました。

 

4. メンバーとキャストの向き合い方・その1

 『What a Wonderful Dream!!』のアルバムに収録されているソロ曲のパートが始まりました。このソロ曲については、ライブに先立ってアニメ系ネットメディアでキャストへの取材記事が掲載されました。そこでは、キャストが曲の解釈を語っていました。

この記事から5連続で投稿されている

febri.jp

 ライブのトップバッターは可可で、『水色のSunday』でした。この曲では、中国語詞の部分を「心の中にいるもう一人の自分」として歌っていたようです。夢も、故郷の家族も、かけがえのない自分の一部だということです。メインステージも十分近いので、モニターを見る必要はないのですが、曲の終盤に傘を差しながら歌う可可役・Liyuuさんを、上から映す場面があって、どこから撮っているのかと一瞬きょろきょろしてしまいました。可可を見下ろしているのは誰なのでしょうか。成長した可可が、今も昔も変わらない憧れを抱く中国にいたころの可可を見下ろしているのでしょうか。それとも、可可より身長が高いLiyuuさんでしょうか。Liyuuさんも、同じように憧れを抱いて来日した、「もう一人の可可」と言えます

 お次は千砂都の『Flyer’s High』です。澄んだ朝の空気のような高音が気持ちよく、激しくはないもののキレのよい動きがかっこいい、爽やかな曲です。曲の終盤、ステージ手前からたくさんのシャボン玉がまっすぐに空を目指して飛び上がりました。千砂都の性格は、大好きな「まんまる」に反し、竹を割ったようなまっすぐな性格です。しかし、心は欠けのない「丸」で、そんな千砂都の心を的確に具現化したのが、このシャボン玉というわけです。

まるくて、まっすぐな千砂都

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 2人のパフォーマンスの後、ソロパートの前に退場した伊達さん・ペイトンさん・青山さんが戻ってきました。それも、見たこともない新衣装を引っ提げて。紺色に結び目を多用したかっこいい系の衣装で、結ヶ丘の「結」を身に纏った姿でもありました。

 キャストだけが纏う衣装については、前回のAqours6thの記事で、物語が始まる前のμ’sと、自らが物語となったAqoursの対比で説明しました。では、Liella! の場合はどうかというと、今回の2ndライブがキャストを主人公としているからと考えられます。言い換えれば、TVアニメ、1stライブのようなラブライブ!』の世界の物語と、キャストのいる私たちの世界の物語が複線的に存在しているということです。道理で、『What a Wonderful Dream!!』のジャケットにはメンバー版とキャスト版がそれぞれあったわけです。もっとも、この衣装は今回初登場なので、今後この衣装を纏うLiella! メンバーが描かれないとも限りません。

オリジナル衣装の意味

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 そう考えると、最初の『Starlight Prologue』の意味もわかってきます。最初にメンバーがアニメ映像でライブを行い、キャストにバトンを渡してライブが始まったということです。文字通り、もう1つのLiella! の物語の「プロローグ」となったのです。

 さて、この3人は『だから僕らは鳴らすんだ!』のイントロが流れ続けるのに合わせ、観客とクラップのコール&レスポンスを繰り広げました。「アリーナ!」「2階席!」などばかりではなく、「朝ご飯食べた人!」などといろいろな観客に呼びかけていました。この曲は今の環境では、一番観客席が沸く曲ということになります。私たちも一緒に盛り上げられるというのは何よりの喜びです。

 しばらくクラップをしている間に、なんとLiyuuさんと岬さんが衣装替えを済ませ、5人同じ衣装で曲のパフォーマンスが始まりました。衣装替えに幕間映像を使わず、キャストで繋ぐ、という強い意志に感服させられました。まさに2ndが「キャストのライブ」であることの証左です。

 曲の前は観客とバトンを渡し合い、曲が終わると今度はそのバトンをSunny Passionに渡すと予告して、Liella! は退場していきました。

 

5. 優しく強い輝き・Sunny Passion

 Sunny Passion (サニパ) は、1月の1stライブ追加公演以来、2度目の出演となりました。『HOT PASSION!!』は代表曲で、これだけで会場は沸き上がります。流石はLiella! を下した東京代表チームです。客席では、悠奈と摩央を思わせる黄色と紫色が振られていました。公式ブレードにはこれらの色は入っていません。それどころか、Sunny Passionのメンバーカラーというものは、公式から発表されていません*1。皆他タイトルのラブライブレードや汎用のペンライトを持っていて、サニパに合う色を振っていたのです。ファンの愛だけで成り立った光景です。

 サニパの衣装には、大きな翼が付いています。ラブライブ! の世界で羽根といえば、受け取った想い、芽生えた想いの象徴ですが、サニパは集合体としてそれを背負っています。まさに、物理的にも背負っているものが違う、というわけです。

 サニパが2曲続けてパフォーマンス……かと思いきや、Liella! (劇中で未加入だった恋を除くメンバー) がそれに対抗して『常夏☆サンシャイン』を始めました。1stライブ追加公演では、お互い相手の曲にバックダンサーとして登場していましたが、今回はそれぞれ単独のパフォーマンスでガチンコ勝負です。この曲のライブ特有の聴きどころといえば、ラストの岬さんのロングトーンです。『Flyer’s High』でもラスサビ前で収録版よりも長く溜めていたように、千砂都、そして岬さんの魅力は、キレッキレのダンスという「動」だけでなく「静」にもあります。1stライブでは、このロングトーンが回を重ねるごとにパワーアップしていたことが知られています。確かに、大阪で聴いたときより長く、観る者を釘付けにするオーラを放っていました。

 それからバトンがサニパに戻り、波の音が会場に聞こえ、初披露の『Till Sunrise』に繋がりました。この曲はセンターステージ披露で、サニパの2人も間近に見ることができました。波の音を聞くとどこかAqoursを思い出してしまいますが、南の島を昼も夜も照らす優しい光を浴びた気分でした。

 

6. メンバーとキャストの向き合い方・その2

 素晴らしい共演の後、ソロパートの後半に移りました。まずはかのんの『青空を待ってる』でした。1番はスタンドマイクで歌い、それからマイクを取り外してセンターステージに向かって歩き出す、その動きだけで印象に残る曲です。この曲の「君」は、かのんにとっての歌であることが、伊達さゆりさんから明言されています。自ら歩き出したことで、心の奥に隠していて、しかし消えなかった気持ちに向き合えたのです。

 私がラブライブ! シリーズの現地で初めて泣き、声優がライブするということの意味を知った曲は、鞠莉/鈴木愛奈さんの『New Winding Road』でした。純粋な歌の力と照明だけのパフォーマンスは、私の心を打ってやみません

 ところで、もしこの曲の「君」が歌のことなら、これは1期1話冒頭の『ほんのちょっぴり』の対になる歌なのかもしれません。「いつでもそばでひかりをくれた」のに、「見るたび何故か傷つけて」、「心はささくれ」、「ありがとうも言え」ないのは、その光が、自分の弱さや怖れによって心に影を作ったからだと思います。しかし、そんなかのんの心の中にも、消えない光があったのです。

 伊達さんは、1stライブの重責からか、歌うことに苦しんだ時期があったそうです。群馬公演 (配信)、大阪公演、東京追加公演 (配信) と見るたびに、絞り出すような歌い方に変わっていったのは、肉体的な限界もあったかもしれませんが、主にはそのせいだったのかもしれません。私の目には、それでも必死に歌っている姿がかっこよく映りましたが、2ndライブではそれを超えてきてくれました。かのんは、伊達さんにとっての光でもあったのかもしれません。すると、伊達さんの『青空を待ってる』での「君」は、歌であり、かのんであったと言えます。

 恋の『微熱のワルツ』は一転して、全身を使った表現が魅力的でした。恋も、恋役の青山なぎささんもクラシックバレエを特技としており、この曲にもバレエの動きが取り入れられているのですが、ワルツの曲調、歌声、全身の表現も相まって、さながらミュージカルのワンシーンのようでした。流石は伊波杏樹さんとピッタンコ率90%*2を誇ると言わんばかりの、ミュージカル適性の高さだと思います。いつか、『ラブライブ! スーパースター!!』のミュージカルがあったら観に行きたいものです。

 こちらの「キミ」は、青山さん自身は恋をイメージして歌ったそうですが、恋にとってはなんだったのでしょうか。もう1曲のソロ『リバーブ』に出てくる「君」と同じと考えると、そこには恋の永遠の憧れである葉月花が浮かびます。しかし、普通自分の親を「君」とは呼ばないはずです。花が活動していた頃を恋は当然知りませんし、ここでは具体的な母自身というより、より抽象的に恋の憧れの中にいるスクールアイドルのことなのかもしれません。

 さて、この後は最後のすみれのソロ……と思い、観客たちはみなブレードをメロングリーンに変えて待機していました。しかし、現れたのはまさかの「クーカー」。意表を衝かれました。1stライブを通し、伊達さんにダメージと葛藤が蓄積してきたのは前に述べた通りですが、今回の『Tiny Stars』はそれを振り切ったパーフェクトな状態での披露となりました。直前の伊達さんと青山さんは、一般オーディションで選ばれた2人で、これが現実におけるLiella! の始まりと言えます。そして、『Tiny Stars』は、アニメのLiella! メンバーがスクールアイドルとして初めて歌った曲で、やはり2つの夢の始まりが並行して表現されています。

 すみれ関連の曲は、1stライブでも連続して披露されていましたが、今回はそれに新たなソロ曲の『みてろ!』が加わり、3曲で一連の「すみれ編」となりました。『みてろ!』というタイトルは、アニメ1期10話のタイトル『チェケラッ!!』を直訳したものでもあります。

 曲のイントロが終わるタイミングで、舞台が爆発しました。衝撃で手から力が抜け、ブレードを手放してしまいました。手首ひもがあるので落としはしませんでしたが、私も周りの観客も、もうペイトンさんに釘付けです。『みてろ!』はどっしりとした力強いテンポのロックナンバーです。勇気が足りなくて、他者から押し付けられる役割に不満を持ちつつもそこに逃げていたすみれが、そんな世界に反旗を翻す、自信と反骨精神に満ち溢れた歌です。歌姫になりたいというペイトンさん自身を勇気づける歌でもあると思います。

 ところで、ペイトンさんは『だから僕らは鳴らすんだ!』の前で観客に呼びかけているところでも、「社会人の皆様! お疲れ様です!」と言っていました。また、Twitterでは共通テストを受ける人に「すごいなぁ」と素直な尊敬の言葉をかけていました。自分が人と違う芸能の人生を歩んでいるという思いがあるのかもしれませんが、私たちからすれば18歳にしてあのような活躍をしているほうがよほどすごい人だと思います。これほど腰の低い人はいないというくらいのいい子だと思いませんか。一方で、すみれも負けず劣らずのいい子で、それが裏目に出て、我を通す意志がなければ、努力するだけでは主役になれませんでした。いい子の塊のようなペイトンさんにしかできない役だと言えそうです。ペイトンさんの、もうごめんなさいはしない、という約束もまさにその延長線上にあります。

 これまでのソロ曲では専用衣装を着ていましたが、すみれ役・ペイトン尚未さんは、『ノンフィクション!!』の衣装を着て登場しました。3曲通しで披露されたこともあるかもしれませんが、すみれが自分の夢を世界に向けてぶつけるには、可可が作った衣装しかなかったのです。歌詞の「君」は、すみれにとっては可可であり、ペイトンさんにとってはすみれである、と考えています。過去にはことりや曜、ルビィも衣装を作っていましたが、物語の中でこれほど重要な役割を担ったのは初めてです。

 すみれのソロが終わると、『ノンフィクション!!』の衣装を着た岬さんと青山さんが現れました。始まったのは、1対1のダンスバトルです。ペイトンさんのMCで、岬さんがストリートダンスを、青山さんがクラシックバレエの型を披露しました。「ダンス」バトルのはずですが、ずれていても美しいのが恋です。青山さんがいたく気に入っていた今回のライブグッズであるサングラスも、その象徴かもしれません (これも1期10話のアイテム)。

 ここでも幕間映像ではなく、キャストのパフォーマンスで観客の視線を繋ぎ止め、5人が揃ったところで『ノンフィクション!!』が始まりました。『ノンフィクション!!』からは1stライブと同じく『Day1』に繋がります。私はこの曲のサビのサーチライトが大好きで、1stライブでも泣いてしまったところですが、今度はこのライブのコンセプトを理解しつつあるところで、これがペイトンさんの物語の晴れ舞台なのだと思い、今回も新鮮な感動を覚えました。

すみれ編のベースとなる1期10話の感想はこちら

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 ところで、この『Day1』についてもう一つ気づいたことがありました。「思い立ったらその日が始まりのDay1」という歌詞は、実は可可の座右の銘から来ているのです。『ノンフィクション!!』衣装の『みてろ!』から一つながりで、すみれが立ち上がるのに可可がいかに大きな役割を果たしたかを改めて実感しました。開演前に、Liella! のプロフィールには好きな食べ物が3つ記載されているとか、スリーサイズがないとか、教科の欄がμ's以来に復活しているとかいう話を友人にしていましたが、まさにそのプロフィール欄から物語が始まっていたのです。

 

7. 私のSymphony: 『スーパースター!!』の今を刻む歌

 さて、ここで初めて幕間映像が使用されます。それぞれのメンバーが傷ついた過去、そこから生まれた夢、スクールアイドル活動を通してその夢を叶えた瞬間、最後に生まれた5人の夢、という「夢」に注目したアニメ1期の振り返りでした。もしかすると、「夢」というものは、本質的に儚く、苦しいところがあるのかもしれません。自分の望むものがそこにないという痛みと表裏一体だからです。

 伊達さんの独唱で『私のSymphony』が始まりました。私は首を傾げてしまいました。この演出は、1stライブでTVアニメを再現するためのものだったのでは……? しかし、独唱がLiyuuさんに移り、一気に腑に落ちました。独唱バージョンのまま、本来のパート分けに沿って歌い上げられていたのです。当然、「私を叶える物語」は、かのんだけのものではありません。直前の映像は、それを意味していたのです。唯一挿入されたアニメ本編映像は、『私のSymphony』に新たな意味を吹き込みました。2番からは、1stライブ同様、オリジナルと同じ編曲でパフォーマンスをしていました。

 思えば、『私のSymphony』は、毎度違った演出で披露されています。『始まりは君の空』のリリースイベントでは、無観客となった公会堂で、客席で歌っていました。観客ゼロからのスタート、そして夢を叶える前のLiella! 自身の、客席からのスタートを意味する演出でした。1stライブでは、かのんが本当の意味で自分を信じ、夢を叶えられたシーンの再現となりました。CDLLでは、Liella! の紹介も兼ねているので、唯一オリジナル版の披露となりました。そして、2ndライブでは、新たに5人と5人の「私を叶える物語」になりました。今後も、披露されるたびに新たな物語を見せてくれる、Liella! を代表する曲になるのではないのでしょうか。

私のSymphony

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 こうして、5人が夢を叶えてやってきたステージで、5人は始まりの歌を歌います。『始まりは君の空』では、1stライブで見た上着を投げるパフォーマンスを、より間近で見ることができました。ちなみにDay2で曲が変わったのはここだけで、劇中における始まりの歌だった『Wish Song』になったそうです。Liella! のライブでは、両日で曲があまり変わらない傾向があると思います。現実のLiella! とアニメのLiella!、その両方が夢を持って始まったということが伝わるセットリスト変更でした。最後の曲は、そんな夢を繋いでいく『Dream Rainbow』でした。

 

8. 叶った夢の先に夢がある

 5人が退場してすぐ、会場にはアンコールの拍手が起こります。今回は、これはあまり長時間続かず、ほどなくしてメンバーの顔のアイコンが喋るショートアニメが始まりました。アニメ中では、Liella! が横浜の美味しい食べ物の話で盛り上がっていました。1stライブツアーでは、キャストが行く先々で名物の話ばかりしていましたが、それを逆輸入した形になりました。ある意味、ライブ冒頭でキャストにバトンを渡したメンバーたちが、ここでレスポンスを受け取ったともいえます。

 5人は、横浜上空の雲の上にいました。リーダーのかのんの座右の銘は「雲の上はいつも晴れ」です。自分の胸の中にある好きな気持ちという光に気づいたかのんは、ここで仲間と共に晴れわたる未来にたどり着いたのです。

 5人が降り立ったのは、「神宮競技場」の上でした。5人の夢は、ラブライブ! 決勝での優勝です。アニメや実写PVでも示唆されてはいましたが、ここに、「Liella! の国立競技場でのライブ」が大きな夢として事実上明言された形になりました。

 その「本当の夢」、『START!! True dreams』がアンコール1曲目でした。メンバーの夢とキャストの夢、ここまで複線的に表現されてきたものが、ここでひとつになりました。次の曲は『Dreaming Energy』で、アンコール前から3曲続いて「dream」を含む曲を歌っていました。

 夢のような時間はどんどん過ぎ去っていきます。ライブ会場を出れば、現実に戻ってしまうのでしょうか。最後の曲『ニゾン』は、そんな切ない心の中に消えないものがあることを教えてくれました。最後までセンターステージでパフォーマンスしてくれた上に、最後の挨拶もセンターステージまで来てくれて、こちらとしても何度も何度もブレードを振り返して応えていました。1stライブが終わった時、心が洗われるような、晴れやかな気持ちになりましたが、今回も会場の外に待ち受ける私たち自身の夢に向かって、Liella! が背中を押してくれて、背筋がしゃきっとする思いでした。

 

9. 総括・そして、私の夢へ

 ライブ終演後は規制退場となります。ライブ3週目で、これも慣れたものですが、今回は約1.2万人しか観客のいない会場にもかかわらず、なかなか呼ばれません。それでも、何時間もかかるものでもないと、余韻に浸りながら待っていると、だんだん会場を出るのが惜しくさえなってきました。そのうちに、周りを空席に包囲されてきます。私のいたブロックは、なんと最後の最後まで呼ばれなかったのです。

 私のいたブロックは上手側で、一番左側の通路に面した席に座っていました、そこから反対の下手側後方の出口へと誘導されました。つまり、ほとんど空になった会場の中を、出口に近い通路まで私が列を先導して歩くことになりました。このときばかりは自分が世界の中心になったようなつもりで、「みてろ!」とばかりに堂々と客席を後にしました。もはやランウェイを歩くペイトンさんになっていた気分だったのでしょうか。出口で案内していた係員さんに、深々とお辞儀をしてしまいました。

 1stライブのセットリストに入らなかった曲は、BD特典曲11曲と『What a Wonderful Dream!!』収録の新曲7曲、『Till Sunrise』の計19曲です。これだけでセットリストが組めるほどたくさんありますが、今回特典曲は一切披露されませんでした。「特典曲文化」のAqoursとは対照的です*3。その代わりにセットリストに多数入ったのは、TVアニメ1期の楽曲でした。これらはLiella! の物語の骨組みになる存在ですが、アニメ『スーパースター!!』の世界観を表現した1stライブとは異なります。むしろ、キャストにとっての「私を叶える物語」に、アニメのストーリーを再配置しようとしたのだと考えられます。キャストとメンバーそれぞれが支え合いながら成長し、夢を叶えていくという、確かに今までもありましたが、『スーパースター!!』で強く打ち出されている要素は、シリーズを通して重視されてきた世界観とのシンクロを、新しい形で補強していると思います。

 また、MCでキャストが曲や自分のメンバーに関する解釈をかなり明示的に喋るのは、今回のライブの面白い特徴だと思います。キャストの解釈を聞くことは今までにもなかったわけではありませんが、「こういう気持ちでやってきた」ということを共有した上でライブに臨むことができ、一体感が高まりました。ただ、今後Liella! が「説明不要」で見せつけてくるようなライブをしたときは、歓迎したいと思います。

 先週も先々週もですが、美しい景色や、見たかったものをたくさん見せてもらいました。社会の不安や個人的な悩みの中でそれらは消えてしまいそうだけれど、きっと消えないんだと信じています。

 

1stライブのレビュー

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*1:早く出してください

*2:『LoveLive! Series Presents Countdown LoveLive! 2021→2022』(以下、CDLL) のバラエティ企画に由来する。キャストが複数の質問に回答し、異なるグループのキャスト同士でその一致度を競うもの

*3:全巻購入特典が法人別に5曲あるLiella! のほうがパワープレイな気もする