普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

禁断の“珪素の花園” ~ラブライブ! スーパースター!! 第2期感想週報⑦『UR 葉月恋』~

 前回は、夏美がマニーに拘る驚くべき理由が明かされ、ついにLiella! は9人になりました。

 CEOが本当に求めていたものは?

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 さて、遠く離れた海外某国には、夢を叶えて成功し、あまつさえマニーを稼ぎまくった男がいました。この一人の不器用な男が一人娘にしたことが、今回の事件を引き起こします。

一体何が始まったのか!?
(『ラブライブ! スーパースター!!』第2期第7話『UR 葉月恋』より/
©2022 プロジェクトラブライブ! スーパースター!!/配信URL:https://www.youtube.com/watch?v=m2wVwfadyzU)

 「UR 葉月恋」。今回のサブタイトルを一言で解釈するなら、「母親は失っても、父親から、使用人から、母の親友から、そして自身の友人からも最高レアリティ級に愛される恋を巡るドタバタコメディ」ということになります。恋は父親に買い与えられた大量のゲームにどっぷりとはまってしまい、練習も作曲も手に付かず、あわやゲーム依存症という事態になってしまいました。

 

1. 不器用で人騒がせな愛情

 「UR」といえば、一般的にはソシャゲにおける最高レアリティですね。特別なイラストが用意され、強い能力を持っていることがほとんどです。そして、人々はそれを得るためにしばしば多額のお金をつぎ込みます。

 「UR 葉月恋」に廃課金してしまったのは、海外にいる恋の父でした。恋の父といえば、妻の花が追いかけていた学校を建てるという夢を止めようとし、自分は自分の夢を追いかけて海外へ行ってしまった、1期でも物議を醸したキャラクターです。私としては、彼は彼なりに「私を叶え」たという説を支持したいのですが、その人生は後悔と負い目に満ちていました。しかし、事業が成功したとみられ、お金はたくさんあるようです。1期12話では、ポケットマネーで学校を立て直し、あれだけ平成時代のラブライブ! シリーズについて回っていた廃校阻止を一気に「オワコン」にしてしまいました*1

 そんな人物なので、今更寂しい思いをさせてしまった娘に何かをしようとしても、愛情の注ぎ方がわからなくなってしまっているのです。そんなとき、実際に恋の世話をしている使用人のサヤ*2から、恋がゲームに興味があるという連絡を受けます。

 サヤもサヤで、学校のことを独りで抱え込んで苦しんでいた恋を知っていますから、少し羽を伸ばして欲しいと思ってしまいました。そこに主人の有り余る財力が合わさった結果、レトロゲームから最新のVRゲーム、ゲームセンターか『東京ジョイポリス*3かと思わんばかりのアミューズメント筐体までが、広い屋敷に揃ってしまったのでした。

 冒頭、OPも「前回のラブライブ!」もなしで、VR音ゲーの画面から始まった演出には度肝を抜かれた……というより、正直少し困惑しました。流れてきたのは『HOT PASSION!!』ラブライブ! 優勝者ともなると楽曲が音ゲーに実装されたりするんですね。もっとも現実でも、インディーズの曲も遊べるものがありますし、そこまで不思議なことではありません。恋の息遣いや呟きから、恋がプレイしていることこそわかりますが、OP直前でVRゴーグルを外すまで恋の顔すら映らないという思い切りぶりです。

 おそらく母の生前から心配をかけまいと娯楽を自制してきたと思われる恋が、娯楽の類に対してまったく耐性がないことは、視聴者にとっては1期でもわかっていたことです。恋のことを「UR」のように大切にしてきた2人にとっては、大きすぎる盲点でした。

 

2. れんこい

 れんの異変の真相に最初に気づいたのは、意外にもメイでした。れんはピアノに向かったはいいものの、作曲そっちのけでスマホゲームで敵を討伐しようとしていたところを、メイに目撃されました。れんはメイだけに秘密を打ち明け、2人は秘密を共有する関係になったのですが、そんなれんのメイに弱みを握られた、懇願するような表情を覗き見ていたメイの (自称) 幼馴染、四季は、それを「こい」だと言い放ちました。

 歴代作品に出てくる同人誌やアダルトサイトがみな女性同士のものであったように、百合作品として名高いラブライブ! シリーズといえど、勘違いであっても劇中で明確にメンバー同士での交際を疑われるなど、前代未聞のことです。スキャンダルのもとを断とうとするすみれと、またしても炎上商法で知名度アップを図ろうとする (これは百合営業にしかならない気がしますが……) 夏美、そしてひたすら1期でれんが密かに見ていた「禁断のセカイ」を擦りまくる千砂都という構図はまるで薄い本であります。

 観察力の高い四季がこんなことを言い出すなんて、弘法にも筆の誤りというものですが、このような勘違いをしてしまったのが、もしメイといるときの自分の様子を客観的に観察していたため、それをれんの様子にあてはめてしまったからだとすると、想像が捗ります。終盤でメイにときめいていた四季の姿を見ると、あながち荒唐無稽な妄想だとも言い切れません。

 ところで、メイが最終的に何をしたかと言うと、れんを心配したかのんが副会長に立候補すると聞いて心が動きかけたれんに対して、かのんたちに隠し事をせず、きちんと打ち明けた方がいいと言っていたのです。自分の弱みも、恥ずかしいところも伝え合うのが友達だと、自分と四季の関係を例に出して語りました。もっとも、四季はメイに恋しているようで、それでいてメイがでれんを想っている (勘違い) ことそのものよりもむしろ四季に黙っていたことに怒っているようで、四季にとってはそれは相変わらず、まだ名もないキモチなのかもしれませんが……。ほんの半年前、正直になれずにいた2人のことを考えると、1年生が北海道合宿で成長して帰ってくると宣言したのは、有言実行だったのだなと思います。今回は、「1年生が2年生の問題解決の糸口になる」という、ある種のターニングポイントになりうる回でした。メイもピアノが弾けるので、同じ担当の、例えば千砂都と四季などでも似たような回があるかもしれませんね。

 

3. 仲間と共に敵に立ち向かえ

 メイとのやりとりを経て、Liella! メンバーに本当のことを打ち明けた恋に対して、かのんはみんなでゲームで遊ぼうと提案します。一人ではどうしても倒せなかった敵を、協力プレイで倒そうというのです。実はこの展開には、「みんなで叶える物語」としての『スーパースター!!』2期の特色がよく現れています。

 この討伐に向かったメンバーのエピソードを振り返ると、「ひとりじゃない」というキーワードが浮かび上がります。かのんとならスクールアイドルができると確信して賭けた可可と、その可可に手を引かれて2人でステージに立ったかのん。独りで抱え込んでいたスクールアイドルへの想いも、手を差し伸べてくれた仲間がいたから思い出すことができた恋。そして、一人の夢は諦めても、誰かと一緒の夢なら叶うかもしれないと、ついこの前に希望を持った夏美という4人です。それぞれがそれぞれのできることを出し合い、足りないところは補い合うことでこそ倒せる敵もいるというものです。少し余談ですが、ここで仲間にビシバシと的確な指示を出す恋の姿は、たとえゲームに漬かっても、傍から見ると"ヤバい"顔をしていても*4、実はかっこよくて頼もしい、生徒会長という感じがします。

 

4. かけがえないものは

 ここまでの展開を振り返ると、本当の意味で力強く、かけがえのないものは仲間の存在だったとわかります。その仲間が集まったのは、母の忘れ形見である結ヶ丘という学校があったからです。憑き物が落ちた恋はピアノの傍らに母との写真を置いて、かのんが詞を書いた曲を弾き始めました。ここで初めて花の顔が映ります。死してなお少女たちに友情と勇気を与え続ける葉月花もまた、「UR」かもしれません

 1期も2期も、恋に関するエピソードでは人の心の暖かさに触れることができます。1期の生徒たち、それに恋自身もそうでしたが、心に不安のあるときは攻撃的になるときもあり、人の心とは危ういものです。しかし、その弱さをわかってくれる人がいます。それぞれのやり方で心を抱き締めようとしてくれる人がいて、不器用で空回りしてしまうこともありますが、それが集まれば愛というものは何にも負けない強いものになります。

 次回からは、そんな「UR」の揃ったメンバーで挑む「ゲーム」の始まりです。Liella! は、果たして連覇を狙うSunny Passionを破り、雪辱を果たすことができるのでしょうか。まずは2週間、私たちも準備をして待つことにしましょう。

*1:入学希望者が増えたのは、もちろんLiella! の活躍のおかげでもある

*2:スクフェス』ではまさかの「さや」表記だった

*3:ニジガクコラボ第二弾も盛況のようである

*4:このシーンの顔芸は輪をかけて多い。後ろで百合百合している四季とメイを除いて全員顔芸してしまう