普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

一瞬の奇跡よ、永遠に煌めけ 異次元フェス アイドルマスター☆♡ラブライブ! 歌合戦感想

 2024年も『普門寺飛優のひゅーまにずむ』をよろしくお願いいたします。

 初めに、2023年末に参加した2つのライブの感想記事がまだ投稿で来ておりませんでしたので、そちらをお読みください。『幻日のヨハネ』ライブ感想は後日投稿予定です。

 

 

約束の地、東京ドームでぶつかり合う愛とアイ

 『異次元フェス アイドルマスター☆♡ラブライブ! 歌合戦』。それは奇跡の瞬間であり、新しい時代の始まりでした。

 『THE IDOLM@STER』(以下、アイマス) シリーズと『ラブライブ!』シリーズといえば、日本の2次元アイドル作品の2大巨頭です。アニメかアイドルを知っていれば名前を聞いたことはないくらいであり、同じバンダイナムコグループから供給されていながら、これまでほとんど接点を持つことがありませんでした。アニメやゲームを知らない人からは区別が付かない程度でありながら、両方兼業のファン以外はお互いに一線を引いていたように思います。かつて両者のファンの間に対立があった時期があるのも事実です。

 なので、情報が発表された時にはデマかと思いましたが、公式からの本当の発表でした。しかも会場は東京ドーム『μ's FINAL LoveLive!』Aqours 6th LoveLive! <WINDY STAGE>』、『M@STER OF IDOL WORLD!!!!!』などが開催された、そしてバンダイナムコエンターテインメントフェスティバル (1st)』でお互いのファンが出会った、双方にとって大切な場所で、大きな大きな舞台でした。

 2023年12月10日 (日)、DAY2の現地へ行ってきました。

 

 

はじめに (セットリスト一覧)

 ここに、DAY2全50曲のセットリストを掲載します。

 セットリストに先立ち、表中および文中に登場する用語の凡例も作成しておきました。

参加作品名・グループ名

デ: 『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS』(デレマス)

出演キャスト13名全員参加の場合「シンデレラガールズ

ミ: 『THE IDOLM@STER MILLION LIVE!』(ミリマス)

出演キャスト8名全員参加の場合「MILLIONSTARS」

シ: 『THE IDOLM@STER SHINY COLORS』(シャニマス)

出演キャスト14名全員参加の場合「シャイニーカラーズ」

サ: 『ラブライブ! サンシャイン!!』 (サンシャイン!!)

全員参加の場合「Aqours

虹: 『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(虹ヶ咲)

全員参加の場合「ニジガク12」(侑を除く)、「ニジガク13」(侑を含む)

ス; 『ラブライブ! スーパースター!!』(スーパースター!!)

全員参加の場合「Liella!」

蓮: 『ラブライブ! 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』(蓮ノ空)

全員参加の場合「蓮ノ空」

ル: 『スクールアイドルミュージカル』

ア: 『THE IDOLM@STER

ラ: 『ラブライブ!

異: 『異次元フェス アイドルマスター☆♡ラブライブ! 歌合戦』(「異次元フェス」または「歌合戦」)

・文中では「アイドル」はアイマスシリーズの登場人物を、「スクールアイドル」はラブライブ! シリーズの登場人物を指します。ただし、両方の総称として「アイドル」と表記する場合があります。

・また、表中では異次元さをよりご理解いただくために、歌唱メンバーの部分をメンバー(アイドル・スクールアイドル) の名前で表記しています。

 今回、DAY1の公演も配信で視聴したので、こちらの楽曲はセトリ表に代えて、(曲順/ブランド/歌唱メンバー) の順で曲名の後に表記しています。

 

セットリスト一覧 (DAY2)

曲順 曲名 ブランド 参加メンバー
1 Yes! Party Time!!               シンデレラガールズ
2 On your mark               蓮ノ空
3 ビタミンSUMMER!               Liella!
4 シャイノグラフィ               シャイニーカラーズ
5 Love U my friends               ニジガク12
6 Rat A Tat!!!               MILLIONSTARS
7 未来の僕らは知ってるよ               Aqours
  幕間                   愛×瑠璃乃×果穂×みりあ
8 流れ星キセキ               ニュージェネレーションズ
9 CHASE!               せつ菜
10 めっちゃGoing!!              
11 Toy Doll               ミア
12 ノンフィクションヒーローショー               みらくらぱーく!
13 学祭革命夜明け前               放課後クライマックスガールズ
14 WATER BLUE NEW WORLD               Aqours
15 スター宣言               Liella!
16 ジャングル☆パーティー               MILLIONSTARS
17 虹色Passions!           真乃×璃奈×夏美
18 Mix shake!!         花帆×千枝×ルビィ×風花
  幕間                   めぐる×夏美×歌織×歩夢
19 Sweet Sweet Soul               莉緒・百合子・可奈・紬
20 無敵級*ビリーバー               かすみ
21 オードリー               しずく
22 哀温ノ詩               エマ
23 Happy Funny Lucky               illumination STARS
24 眩耀夜行               スリーズブーケ
25 Shine In The Sky☆               U149
26 Dancing Raspberry               5yncri5e!
27 Happy Nyan! Days           雪美×歩夢×百合子
28 キャットスクワッド         綴理×梨子×夏葉×メイ
  MC                   未央×侑 (×ラプラス×ドーラ)
29 きらりひらり舞う桜               スクールアイドルミュージカル
30 ゆめの羅針盤               スクールアイドルミュージカル
  幕間                   ダイヤ×さやか×凛×百合子
31 MY舞☆TONIGHT           晴・梢・凛世
32 侠気乱舞         恋×ダイヤ×紬×ミア
33 Wandering Dream Chaser               Straylight
34 KNOT               DOLLCHESTRA
35 無自覚アプリオリ               CoMETIK
36 Just Believe!!!               ニジガク12
37 Raise the FLAG               ジュリア・歌織・紗代子・風花
38 Day1               Liella!
39 ガールズ・イン・ザ・フロンティア               こずえ・薫・凛・卯月・未央・小春・みりあ
  幕間                   晴×真乃×梢×かのん
40 さよならアンドロメダ             MILLIONSTARS×Aqours
41 私のSymphony             Liella!×シンデレラガールズ
42 フォーチュンムービー         歌織・可奈×夏美・冬毬×梢・花帆×あさひ・果穂
43 Tracing Defender   千砂都×梨沙×せつ菜×愛依×曜×紗代子×さやか×四季
44 ハーモニクス     慈×かのん×ダイヤ×ジュリア×凛×ルカ
45 繚乱!ビクトリーロード   卯月・未央×風花・莉緒×めぐる・冬優子×千歌・花丸×彼方・栞子×可可・すみれ×綴理・瑠璃乃
46 コットンキャンディえいえいおー!             ルビデレラ (ルビィ×U149)
47 Thank You!             シャイニーカラーズ×蓮ノ空
48 Snow halation           アイマス全員
49 M@STERPIECE Aqours×ニジガク12×Liella!×蓮ノ空
  MC                    
50 異次元☆♡BIGBANG 全員

※『M@STERPIECE』は、最終サビのみアイマスメンバー、侑、スクールアイドルミュージカルが参加

 

三つの属性

 ラブライブ! シリーズもアイマスシリーズも、数多くのアプリゲームをリリースしています。その中では、アイドルやスクールアイドル、また楽曲を3つの属性に分類することが多いです。例えば『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』(デレステ) なら「パッション」「キュート」「クール」、『スクフェス』や『リンクラ』なら「スマイル」「ピュア」「クール」という感じです。この「3つに分ける」というのが、従来からある意外な共通項でした (『スクスタ』は6属性であるように、例外もある)。今回のライブも同じように、「元気に歌合戦」「かわいく歌合戦」「かっこよく歌合戦」という3つのセクションが用意されていました。

 曲をジャンル分けすることにより、例えば「ここは『虹ヶ咲』のセクション」「ここは『シャニマス』のセクション」のようなことが起こらず、どのセクションにも全作品のアイドルが入れ替わり立ち替わり、それぞれのコンセプトに合う曲を披露していく、息をつく暇がないようなライブが実現していました。

 『デレステ』の属性分けと対応するこのセクション分けは、アイドルの曲の持つ様々な要素を内包しています。このため、アイマスシリーズでは比較的ストレートに「元気な曲」「かわいい曲」「かっこいい曲」が選ばれる傾向が強かった一方で、ラブライブ! シリーズではそれらの属性の解釈を問われるような、少し変わった選曲が行われていました。 現地参加したDAY2を例に挙げると、最初の「元気に歌合戦」セクションにおいて、Aqours『WATER BLUE NEW WORLD』を披露しました。言うまでもなく、これは東京ドーム (劇中では「アキバドーム」) で披露されたラブライブ! 決勝の楽曲です。文脈も楽曲そのものの力も合わさって、シリーズ最強とも目される曲ですが、実際にAqoursはこの曲でラブライブ! を制覇しました。後日の生放送で、Aqoursはこの曲について「どうしても歌合戦に勝つために」披露したと述べていました。スクールアイドルも含めアイドルというものは、常に自分自身やライバルと戦っているものですが、既にラブライブ! 陣営では最も先輩でありながら “永遠の挑戦者” として空気を読まずに仕掛ける大胆さや血の気の多さは、ある意味Aqoursが誰よりも「元気」であることを証明するものだったのです。そこにLiella! の『スター宣言』が続きました。これはLiella! がラブライブ! 優勝を誓う曲で、AqoursとLiella! で年は離れてはいるものの「追う者と追われる者」の関係を意識させます。歌詞の内容もへこたれそうなときこそ、「元気」でいたいというもので、様々な「元気」の在り方を見せてくれたのがスクールアイドルでした。

 この後手番がアイマスに渡ったのですが、ここで披露されたのが『ミリマス』から「あの」『ジャングル☆パーティーでした。「ズンドコズンドコドンツクドンツク」「ウンババウッホッホ」というキャッチーなコールで会場を沸かせたのみならず、その後数日に渡って (現在進行形で) ネットミームになりました。こちらにはプロのアイドルとして身体を張っているのを感じ、元気にも色々あるのだなと思いました。一連のセトリで私自身大いに元気になったことは言うまでもありません。

 また、ニジガクは1日6人ずつ、全員がソロ曲を披露しましたが、DAY2「かわいく歌合戦」セクションでは『無敵級*ビリーバー』『オードリー』『哀温ノ詩』という、これまたコンセプトからするとやや意表を突く選曲となっていました。『無敵級*ビリーバー』はかすみの可愛さとかっこよさの両面を表した曲ですが、まだかすみの曲ということで「かわいく」枠なのも納得できます。そこにかすみと対照的な「可愛い」存在であり、かすみの背中を追うしずくの『オードリー』が続きました。この辺りは曲というよりメンバーで選んでいる気もします。そして2日間のニジガクソロの大トリとして「可愛い」とは似つかない『哀温ノ詩』が来てしまいました。まあ、この曲こそエマの「癒やし系」の原典であり極致でもあるのですが……。まとめるなら、「かわいい」を極めすぎて別の次元に到達してしまったスクールアイドルと楽曲たちともいえるでしょうか。

 この『哀温ノ詩』こそ、私が生で聴くまで死ねないと思い続けていた曲です。初披露は『無敵級*ビリーバー』と同じ無観客の2ndライブであり、こちらはその後QU4RTZのファンミーティングでしか披露されていなかったので、ショートバージョンとはいえ今回が最も多くの人に曲が届いた瞬間でした。わずかな時間しか輝けないスクールアイドルの継承をテーマにした曲であると同時に、指出毬亜さんの演技を通じてエマがここで蒔いた優しさの種を、5万人を超える観客が受け取って、自分たちのフィールドでそれぞれ育てていけると信じられるような、暖かさに包まれていました。しかし、その余韻にすら浸らせてくれないのが『異次元フェス』の怖いところです。(笑)

 「かっこよく歌合戦」は、どちらかというとストレートな強い曲のぶつけ合いでした。そんな中でラブライブ! シリーズからは『Just Believe!!!』『Day1』が披露されました。このジャンルの中ではこれも異色でしたが、前途の明るさを歌い上げるような、スクールアイドルらしいかっこよさを意識した選曲かもしれません。『Day1』が始まるとき、わざわざかのん役・伊達さゆりさんが「Day2」を強調した曲紹介をしていたのがちょっと面白かったです。このライブではこのように歌い始める前に曲名を宣言するのが極めて珍しかったので、知らなかった人にも曲名がはっきりと印象に残ったのではないかと思います。

 セクション毎に共通の流れがあったのも、ライブへの没入感を高めていたと思います。DAY2では「元気に」が有名な『流れ星キセキ』から、「かわいく」が『Sweet Sweet Soul』から始まり、初めにアイマスラブライブ! が楽曲を出し合っていき、最後に混合メンバーで数曲を歌うコラボのステージが用意されるという流れで共通していました。推しコンテンツの出番を待っていたら他作品の曲に圧倒され、いつの間にか異次元空間に取り込まれているという感じで、知っているキャストが普段聴けない曲を歌唱するところや、知っている曲を見慣れないメンバーが歌うところなど、次々にここにしかない光景が繰り広げられていました。一方「かっこよく」だけはこの順序が逆転し、いきなり混合メンバーの『MY舞☆TONIGHT』『侠気乱舞』が披露されました。ダイヤも梢も好きな私には最高の流れで、身体が持たないのではないかというくらい高まりました。

 

二つのシリーズが絡み合う!

 最初にも書きましたが、アイマスラブライブ! は二次元アイドルコンテンツの二大巨頭です。2018年の支出喚起力ランキングは、2作品を合わせると圧倒的トップに躍り出るほど、ファン層の厚い作品群であり、コロナ禍を経た現在でもその勢いは衰えていません。しかし、その両者はバンダイナムコグループという共通のオーナーを持ちつつも、常に混ざり合うことなく一線で分かたれていました。

 それが取り払われたのが今回のライブです。アイマスラブライブ! が時にぶつかり合い、時に絡み合う、非常に刺激的なセットリストが組まれました。

 ジャンルに従った選曲は前章に述べたとおりですが、その中で同系統の曲を出し合うパートがありました。DAY2でいえば「かわいく」の終盤でA・ZU・NAの『Happy Nyan! Days』が披露されたかと思えば、アイマス側からは放課後クライマックスガールズの『キャットスクワッド』が繰り出されました。それも両方とも混合メンバーで、各ブランドから一人ずつのキャストが猫耳を付けて登場することになりました。見知った声優の思わぬ猫耳姿に狂喜したファンも少なくなかったのではないでしょうか。私が特別かわいいと思ったのは自宅でも猫を飼っている綴理役・佐々木琴子さんのそれでした。

 DAY1でも、みらくらぱーく! の『ハクチューアラモード』(25/蓮/悠貴×瑠璃乃×星梨花) に続き、アルストロメリア『ラブ・ボナペティート』(26/シ/冬毬×花丸×千雪×エマ×慈) が、いずれも混合メンバーで披露されました。いずれもお菓子作りをモチーフにしたラブソングです。ちなみに、ニジガクにも路線の近い『Sugar Sugar Yummy Yummy Parfait』がありますが、こちらは未披露のため出番はありませんでした (ニジガク6thで披露)。このように、似た系統の曲が出てくることで、相手陣営の曲の中から推し曲を見つけやすいセトリになっていました。

 一方で、「かっこよく」セクションではこれが文字通りの激闘となりました。DAY2でStraylightの『Wandering Dream Chaser』、DOLLCHESTRAの『KNOT』、CoMETIKの『無自覚アプリオリと、3曲続けてユニット曲が披露されたのには度肝を抜かれました。特にDOLLCHESTRA (蓮ノ空は全てそうですが) とCoMETIKは新興ユニットであり、またとないアピールの機会となったようです。さやか役・野中ここなさんの叫びと、ルカ役・川口莉奈さんの叫びが激突するようでした。

 アイマスシリーズからの猛烈なアピールを浴びて、改めて自陣営であるラブライブ! シリーズについて思うのは、スクールアイドルとアイドルの違いです。ライブ前の特番で未来役・山崎はるかさん (DAY1のみ出演) が「プロデューサーとアイドルの間には越えられない一線があるが、『あなた』と歩夢は幼馴染」という相違点に言及していましたが、ここにアイドルとスクールアイドルの違いに関するヒントがあると思います。このことを象徴する楽曲が、DAY1で初の13人披露となった『わちゅごなどぅー』(9/虹/ニジガク13) だったと思います。本来の意味のスクールアイドルではない「あなた」の象徴たる侑がステージに上って歌って踊っていたことは、スクールアイドルとスクールアイドル以外の垣根が低く、開かれていることを意味しているといえます。半面、(プロの) アイドルはその垣根があるからこそスターであり、デビューしたという事実に重みがあるように感じます。

 アイドルとそのプロデューサーに向けて、「スクールアイドル」というものをアピールしたもう一つの要素が『スクールアイドルミュージカル』でした。もともとミュージカル調を意識していたラブライブ! が送り出した「本物の」ミュージカルで、2024年1月にも一部キャスト変更とダブルキャスト化が行われつつも、3度目の公演に漕ぎ着けます。舞台俳優であるキャストたちが劇場を飛び出して、東京ドームに降り立ちました。「アイドル対スクールアイドル」という触れ込みだったこの『歌合戦』ですが、その二つに対して私が最終的に持った印象は「アイドルは『なる』もの、スクールアイドルは『やる』もの」というものでした*1

 

『スクールアイドルミュージカル』の紹介。今月再び公演があります!

carat8008.hateblo.jp

carat8008.hateblo.jp

 最後に、両シリーズのコラボで実施されたMCについても触れておきます。ラブライブ! からは両日侑役の矢野妃菜喜さんが、アイマスからDAY1は未来役の山崎さん、DAY2は未央役の原紗友里さんが登壇しました。ここでは、両コンテンツの大ファンであるVTuberラプラス・ダークネスさんとドーラさん (この2人もそれぞれホロライブとにじさんじの所属であり、これ自体がコラボでもある) による応援アンバサダーとしての挨拶や、ファンから事前に寄せられたイラストの紹介が行われました。「アイドルマスター賞」のイラストには、様々なアイドルやスクールアイドルが勢揃いしており、絵の下にクイズの問題文が書かれていました。3連番の一人が、そのうちの1人がμ'sの星空凛であることに気づいたのを受けて、私はその答えを当てることができました。ちなみに作者のあぶけろさんは結ヶ丘女子高校のマスコットキャラクター「ゆいがおー」のデザイナーでもあり、今回の受賞で「2冠」達成となったようです。

 

一度きりの奇跡

 3つのセクションをやりきった両陣営が最後にぶつかるのが、「究極の歌合戦」でした。ここまででも、通常のライブであればハイライトやクライマックスになりうる曲しか選曲されていない今回のライブですが、その中でもクライマックス、つまり2次元アイドル界の頂点とも呼べるセットリストが展開されました。そして、『歌合戦』におけるストーリーライン的な部分が、「究極の歌合戦」には込められていました

 DAY1で1曲目を飾った楽曲は『Dye the sky.』(40/シ/ナターリア・美波・周子×円香・恋鐘・にちか×しずく×ダイヤ×すみれ) でした。自分の色で世界を染めよう、という歌をアイマスのアイドルが歌っていると、2番からスクールアイドルも参戦するという流れで、アイドルとスクールアイドルの「出会い」が演出されました。それに対し、DAY2の1曲目でかかったのが『さよならアンドロメダでした。共に夢を見た仲間との別れの歌です。これを歌ったAqoursとミリオンスターズには、劇中での学校の廃校とゲームのサービス終了 (こちらはシンデレラガールズとニジガクも経験している) という別れの経験がありますが、ここではラブライブ!アイマスという、元の世界へ帰っていく別れのことを指しています。そして、DAY2の「究極」は、アイドルとスクールアイドルがいかにして別れるかを描き出しました。

 この出会いがもたらしたものとは? という現在地を、まずは明らかにします。それに相応しい曲がLiella! の『私のSymphony』です。5人から9人、11人、披露も無観客から始まって少しずつ大きな会場へ、Liella! の歩みとともに旅をしてきた曲が、今回はシンデレラガールズとのコラボで紡がれました。タイトルに「私の」と付く通り、アイドルを目指して一歩一歩自分の足で進んできた『デレマス』アイドルたちにも当てはまる歌詞になっていたと思います。これからこの曲が披露される度、『歌合戦』がかけがえのない軌跡になって思い出されるでしょう。

 その次の曲は『フォーチュンムービー』でした。なぜこのタイミングでユニット曲……? と思っていると、ステージにはぞろぞろと8人も出てきました。それを見た私は気づいたのです。梢にとっての運命の人は花帆でも、運命は人の数だけあるということに。鬼塚姉妹はもちろんのこと、『ミリマス』『シャニマス』の2組にもその2人だけの関係性があるに違いありません。それだけではありません。やはりというべきか、間奏の台詞パートではここだけのパフォーマンスが行われました。それぞれの組が運命の人を探す中、梢 (花宮初奈さん) は「交わるはずのない道の先で出会った全ての人が運命の人」だと会場のみんなに語りかけました。アイドルとスクールアイドル、そのキャスト同士が出会っただけではありません。私も、アイマスシリーズとアイマスPたちに出会いました。それは運命の出会いでした。

 そして、そんな特別な存在と繋がっていられるかけがえのない時間であるならば、最後まで湿っぽいのは似合いません。『Tracing Defender』『ハーモニクスと圧倒的な強さの楽曲が畳みかけられます。これらの楽曲は、各作品から代表メンバーを集めた「ぼくのかんがえたさいきょうのアイドルユニット」で披露されました。『Tracing Defender』はダンス力の粋を集めたユニットで、Liella! からはダンスリーダー2人、他のラブライブ! シリーズからは各グループ最年少のキャストである斉藤朱夏さん・林鼓子さん・野中ここなさんが選出されました。野中さんはDAY1でも『アライブファクター』(43/ミ/静香×善子×あきら×マルガレーテ×美琴×さやか) で「歌唱力代表」として選出されており、全キャスト中最年少ながら突出した実力に、これまで『蓮ノ空』を知らなかった人たちも注目を浴びせていました。『ハーモニクス』は素晴らしい歌唱力を持ったメンバーが集まりましたが、少なくともラブライブ! 側からは、一度は歌やスクールアイドルを諦めかけたメンバーで構成されていました。ダイヤは望みを託した後輩たちに、かのんは可可やLiella! のメンバーたちに、慈は瑠璃乃に手を引かれて、再びステージに返り咲いたのです。『ハーモニクス』の歌詞との関係にも注目したいところですが、このときは2曲ともただただ圧倒的なパフォーマンスを浴びて、ほとんど放心状態でした。

 

野中さんの凄さに気づいた日

carat8008.hateblo.jp

 ラブライブ! も黙っていません。ここで最強兵器『繚乱! ビクトリーロード』を出しました。現れたのは、特攻服 (?) に身を包んだキャストたち。しかし、この曲にはある「前科」があります。『BUSHIROAD ROCK FESTIVAL 2023』にて、ニジガクのステージかと思わせてBanG Dream!!』『D4DJ』のキャストにも固有の歌詞でパフォーマンスさせたというものです。ということは、今回もニジガク以外のメンバーが立っている可能性がありますが、前奏の時点では暗くて誰がいるのかわかりませんでした。

「日本一の富士の山ァ!」

 伊波杏樹さんです!

 全身に鳥肌が立ち上がり、会場内にも『繚乱』が始まったとき以上の衝撃が広がりました。伊波さんのパワーを引き出す曲が、オリジナル曲以上にあったとは……。その後もメンバーが名乗りを上げる度、それぞれのブランドのファンから悲鳴が上がる、凄まじいステージでした。

 畳みかけるように流れ出したのは『コットンキャンディえいえいおー!』でした。ステージ上を見ると、なんと信じられない数のキャストが。ルビィ役降幡愛さんと一緒にパフォーマンスしていたのは「かわいく」枠で自分たちのアニメOP主題歌『Shine in the Sky☆』を歌っていたU149の皆さんで、この日だけのユニット『ルビデレラ』を結成していました。リリースから3年の間にもTikTokで流行してYouTubeでの再生回数もシリーズ一位に躍り出たり、ステージの大モニターにも映し出されたMVを制作した可哀想に! さんは『おぱんちゅうさぎ』で大ヒットしたりと、「一発屋」に終わらず今なお伝説を残し続けている曲です。そしてこの曲はただのネタ曲ではないというのは以前にも述べた通りです。ここでは、アイドルとスクールアイドル、そしてプロデューサーとラブライバーみんなの「大好き」を、これでもかというほどみんなで共有した、この最高のお祭りのことを歌っているのだと思います。そんな全てに感謝する『Thank You!』をシャイニーカラーズと蓮ノ空の合同メンバーで歌った後、ついに奇跡が起きます。

 

『コットンキャンディえいえいおー!』考察

carat8008.hateblo.jp

 アイドルマスターファミリーによるSnow halationの披露です。言うまでもなくラブライブ! シリーズ最大の伝説の1つであるμ's FINALライブにおける東京ドームでの『Snow halation』。ラブライブ! の全ての根源である「好き」を歌う、まぶしい煌めきの中に飛び込む勇気を歌うその歌、しかしラブライブ! ファミリーであってもおいそれとは歌うことのできないその歌を、アイマスファミリーが繋いでくれたのです。出会うはずのなかったアイマスファミリーが、起こるはずのなかった奇跡を起こしてくれました。

 今回、私は数本だけUOを持参していました*2。とはいえ、普段のライブには持ち込んでいないので折りどころがわからず、慣れないことはするものではないなと思いながら使っていたところにこの曲がやってきました。手持ちは3本。連番は3人。それもひとつの奇跡でした。そして迎えた大サビでは、いつか写真で見た客席一面がオレンジ色に照らし出される光景に包まれていました。私は誇張抜きに、この瞬間のためにこれまで死なずに生きてきたのだと気づきました。

 それだけのものを貰ったラブライブ! ファミリーも、アイマスファミリーにお返しをします。ラブライブ! ファミリーが選んだのは劇場版の挿入歌『M@STERPIECE』。こちらはアイマスの合同ライブなどで披露されているようで、ラブライブ! シリーズとしてもアイマスシリーズが大切に大切に歌い継いできた楽曲を贈られた、夢のような光景でした。今になって考えると、アイドルとスクールアイドルの「永遠」と「瞬間」という対比と、それぞれの大切な楽曲を「歌い継いできた」ことと「語り継いできた」ことの対比は、示唆に富んでいると思います。

 全ての出演者が入り乱れる今回のテーマ曲『異次元☆♡BIGBANG』で、ライブは幕を閉じました。

 

無限大の可能性

 私は、これほどまでに余韻が長く続いたライブを知りません。1週間、タイムラインはその話でもちきりになり、それぞれのブランドの生放送やラジオなどでも他の出演ブランドに関するトークが繰り広げられ、年末に至るまでずっと異次元空間を味わい続けていました。ラブライブ! シリーズのライブ開催頻度は相変わらずの高さで、『幻日のヨハネ』と『虹ヶ咲』のライブが翌週と翌々週に開催されていましたが、最新のライブの感想と『歌合戦』の感想が入り交じっていました。

 SNS上での盛り上がりの中には、「ウンババ構文」のように、既に旬を過ぎていたと思われていたコンテンツが思わぬ「再発見」をされたり、今回出演していないアイドルたちの『繚乱! ビクトリーロード』の歌詞が作られたりと、どちらかだけのファンには想像もできなかったような展開もありました。

 特に、『蓮ノ空』の爆発的なヒットをもたらしたことは注目に値します。『リンクラ』インストールや売上の急増に始まり、『リンクラ』ストーリーの同時視聴会同接数は2~3倍に、かつては空席も見られたFes×LIVE応援上映は全国で完売、コミックマーケット103の『蓮ノ空』ブースには長蛇の列ができるなど、社会現象を引き起こしつつあります。活動開始から1年弱、まだ単独東京ドーム公演 (ニジガク、Liella! すらなし得ていない) は難しいブランドながら、東京ドームでさえ沸かすことのできる実力は十分な姿を見せつけることができていたと思います。

 これからに期待したいのは、今回の『歌合戦』の経験が、お互いのコンテンツにフィードバックされることです。アイマスシリーズ側には実績がありますが、このように様々なメンバーと楽曲が入り乱れるバラエティライブを、ラブライブ! シリーズでもまた見てみたいです。また、今やお互いのファンがお互いについて詳しくなったので、「このアイドルの担当にはこのスクールアイドルがおすすめ」「このスクールアイドル推しにはこのアイドルがおすすめ」のような情報が共有されている状況も、続くことを願います。

 最後に、『繚乱! ビクトリーロード』の綴理の口上を引用して終わりにしたいと思います。綴理はふわふわした印象とは裏腹に人との繋がりを大切にする、それをスクールアイドルの存在意義としている子です。

「これ楽しいね、みんなが繋がる。」

 そんな綴理にとっての『異次元フェス』は、間違いなく夢の舞台でした。そして綴理は芯が強く、貪欲なキャラクターです。一度きり、起こるはずのなかった奇跡を最後まで皆で楽しみ尽くそうとしている中で、これは綴理にしか言えないことで、その実皆思っているので、誰かが言ってくれたことは素晴らしいことだったと思います。

「またやりたいです、おしまい。」

 

*1:もちろんこれもグラデーションである。証拠に、『ミリマス』には『DO THE IDOL!! ~断崖絶壁チュパカブラ~』という曲もある

*2:BanG Dream!! 12th LIVE』で使用した残り