普門寺飛優のひゅーまにずむ

好きなものについて不定期に語ります。

Blooming with 過去・現在・未来 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ 2nd LIVE Tour ~Blooming with ○○○~ 感想

物販・展示に使われた展示ホール1にあった大型パネル

 4月21日 (日) に開催されたラブライブ! 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ 2nd LIVE Tour ~Blooming with ○○○~』千葉公演DAY2に行ってきました。蓮ノ空のお披露目ライブから丸1年、『365 Days』ならぬ366日を経たライブでした。

 このタイトルの「○」は、伏せ字なのか何か意味があるのかは、事前には一切明かされていませんでした。この記事では、3つの「○」に注目しながらライブを振り返り、その意味を紐解いていこうと思います。

1stライブの感想

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セットリスト一覧

1. Dream Believers

2. Trick & Cute

MC

幕間

3. ノンフィクションヒーローショー

4. ド! ド! ド!

5. KNOT

6. AWOKE

7. 千変万華

8. 水彩世界

幕間

9. ツバサ・ラ・リベルテ

10. Mix shake!!

11. ココン東西

12. ツキマカセ

幕間

13. Link to the FUTURE

14. 青とシャボン

15. 飴色

16. Runway

17. ミルク

18. 天才なのかもしれない

19. Special Thanks

20. Dear My Future

幕間

21. 抱きしめる花びら

22. Legato

アンコール

23. DEEPNESS

24. On your mark

MC

25. Colorfulness

26. Pleasure Feather

27. ハッピー至上主義!

MC

28. Dream Believers

MC

ダブルアンコール

29. STEP UP!

30. 永遠のEuphoria

 

Blooming with メッセ

 会場の幕張メッセは、東京ビッグサイトやAichi Sky Expoと同じような展示場です。本来ライブをするような場所ではなく、完全に平面で四角いホールなのですが、壁を取り外すと2つのホールぶち抜きの会場が誕生します。物販会場と合わせて、『蓮ノ空』で3つのホールを使っていました。

 ただ、この構造なのでホール内に柱があります。そのため、極端に見えづらい場所も生じてしまいます。私の席はステージに向かって右端のブロックのちょうど真ん中辺りで、幸いにも柱の陰は回避できました。見やすいとは言い切れない場所でしたが、ここにしかない今日を楽しむのみです。

 

1. Blooming with 366

 この日のちょうど1年前、2023年4月21日 (金)、豊洲PITから蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブのリアルライブはスタートしました。『リンクラ』がアーリーアクセス版でリリースされてから、わずか一週間足らずでした。

はじまりの日

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 時間にすればたった1年かもしれませんが、激動の1年でした。ほとんどの機能が準備中だった『リンクラ』はあらゆる角度から蓮ノ空のスクールアイドルを楽しめるアプリに成長しました。キャストも高頻度の配信・バーチャルライブを通して、元々ハイレベルなデビューを果たしたにもかかわらずさらに見違えるようになりました。はっきり言えば「イロモノ」扱いされていたコンテンツも、『異次元フェス』を皮切りにその底力が世に知られるようになり、急速なブームが起きました。μ'sブームの頃にファンダムにいなかった私にとっても、「第2次ラブライブ! ブーム」の発生を目の当たりにしている気分でした。『蓮ノ空』のおかげで『虹ヶ咲』や『スーパースター!!』にも光が当たっているという見方もできると思います。

 ただの1周年ではなく、1年間366日をともにしてきた実感が、この日のライブを記念すべきものにしていました。

 

2. Blooming with you

 全体の流れを振り返る前に、『Blooming with ○○○』を私が選んだ3つのキーワードで語りたいと思います。自分の中で重要度が高い順に、「期待」「感謝」「癒し」をキーワードとします。

 

2. 1. 期待

 望ましいことではないのですが、この日のライブの中でどうしても忘れられないシーンがあります。 10月度の曲でありながら1st東京・愛知公演では披露されず、発売もされていなかった103期唯一のソロ曲『Runway』が、この度初めて披露の機会を迎えました。ところが、歌い出してすぐのところで、さやか役の野中ここなさんの歌が止まってしまったのです。

 ステージ上で野中さんは「やり直し」を宣言しました。演奏も最初からリスタートしましたが、またしても歌が止まってしまい、野中さんは一旦退場しました。

 会場は騒然としました。何が起こったのかと混乱する人、ライブが止まって不安になる人、様々だったと思います。しかしその中から、ぽつぽつと生まれてきた動きがありました。野中さんへの声援です。

 3度目の正直。野中さんはソロ曲『Runway』を歌いきりました。ライブを一度で成功させるよりも、二度も失敗した曲を仕切り直して成功させるほうが、プレッシャーも厳しくよほど難しいと思います。それを涙一つ見せずに成功させたことには、改めて野中さんの強さを実感します。1年前初めて見たとき、「この人は凄いかもしれない」と思ったのは、間違いではありませんでした。

 そういえば、活動記録15話でも、ラブライブ! 決勝に負けたとき、さやかだけは負けを負けと認め、落ち込む素振りひとつ見せていませんでした。花帆の前だけでは自分の素を見せた梢とも違い、少なくとも人前では全く動じず、ただ再び鍛錬に励むことで自分の気持ちを整理していたさやかの強さと、演じる野中さんには通じるところが間違いなくあると思います。

 さて、ピンチにある人にどんな言葉をかければよいのか、あるいはそもそも言葉をかけるべきなのかというのは、答えの出ない問いです。既に限界まで頑張っている人に「頑張れ」と言ってはいけないのではないか、その言葉が相手を追い詰めやしないかと悩みますし、今回の件でもネット上では議論が巻き起こっていました。これに関しては統一的な正解がないことは前提として私見を述べるなら、「ステージに立つ村野さやかに対しては、声援を送るべき」だと思います。野中さんがさやかとして最高のものを届けようとしているのだから、それに対してはさやかが最も求めているものを届けるべきだということです。元々この曲は10月の竜胆祭で、自身のスクールアイドルとしてのあり方を問われたさやかが、その答えとして出した曲です。他者に求められることが自分のモチベーションであり、その期待に応えることがやりたいことだと確固たる答えを出しました。野中さんは、さやかを演じている以上、そして半年近く温めた期間を経てこの曲を披露している以上、その覚悟をしてきていると思います。ならば、その覚悟に向き合わなければファンとして失礼なのでは、とまで思ってしまいます。もっとも、会場には声援を送らない人もいましたし、声援の内容も「さやか」「なっす」「ここな」などと割れていました。私にはできればファンみんなの声として届けたいという思いがあり、揃えようとして周りを見てしまいましたが、もっと自分の気持ちとして声を届けてもよこったと反省しています。周りを聞いて「ここな」コールをしましたが、私の気持ちに合うものはむしろ「さやか」だったかもしれません。

 彼女をフォローできるとしたら蓮ノ空の仲間や、近しい人たちだと思いますし、ファンはファンのできること、すべきこと、やりたいことをやればよいと思います。あの場においても私は野中さんのことをずっと信頼していましたし、悩んだ末にどの選択を取った人も、野中さんを信頼した末での決断だったと思います。その信頼から来る期待が、野中さんに集められていました。

 また、姿を見せることのないスタッフさんと野中さんの間にも信頼関係があったと信じています。決められた進行からたとえ外れても、野中さんが思い通りのものをファンに届けられるように、最大限の計らいをしてくれたと思います。なお、歌が聞こえなくなったのは本当は機材トラブルだという説もあるようです。しかし、そうだとしてもファンの期待に応えようとした野中さんの誠実さは変わりませんし、裏方さんも現場でやれるだけのことをしてくれたのだと確信しています。

 私はAqours 1stライブのときにはまだライブ現地に行ったことがありませんでしたが、あのときは梨子役の逢田梨香子さんが『想いよひとつになれ』のピアノ伴奏で失敗してしまい、溢れる涙と戦いながらリトライしたのが今も語り草になっています。比較するようなものでもありませんが、今回のライブで何があったか、そして野中さんがどんな想いでどんな対処をしたのか、今はまだファンになっていない未来の蓮ノ空のこと好き好きクラブの皆さんの知るところにもきっとなるのだろうと思います。

 期待を浴びていたのは、さやかだけではありません。ラブライブ! シリーズのライブではお約束となっているアンコールも、ファンの「帰ってきてくれるはずだ」、キャストや運営の「呼んでくれるはずだ」という期待からなる信頼関係で成り立っています。今回は、両日ダブルアンコールが行われました。DAY1でダブルアンコールが成り立ったのは、μ's FINALライブ以来実に8年ぶりとなります。おそらくライブの構成上の事情はあるのでしょうが、歴史的瞬間だったことは確かです。

 

2. 2. 感謝

 そんな信頼関係が成り立っていることに対して、感謝を伝える曲が多かったのも今回のライブの特徴です。

 一番に挙げずにはいられないのが、ラブライブ! 北陸大会曲の『Link to the FUTURE』です。北陸大会を前に、学校にネットを取り上げられるという危機に瀕したスクールアイドルクラブが、たくさんの人々の応援で危機を脱し、その力で大会に挑んだ曲です。

 これが披露された103期12月度Fes×LIVEでは、蓮ノ空メンバーたちが配信ライブでしかできない演出を次々に繰り広げました。例えば、『Reflection in the Mirror』では「壁を壊す」エフェクトがパワーアップしていました。そして、3ユニットが一緒にパフォーマンスするという形式の『Link to the FUTURE』ではそれぞれのユニットらしい映像エフェクトを使いつつ、サビ前ではFes×LIVEオリジナルの間奏が挟まりました。その間、画面にはこれまで蓮ノ空メンバーが繰り広げてきたライブの映像が走馬灯のように映し出され、これまでインターネットを通じてスクールアイドルとファンが結んできた絆が再確認されました。そして、その映像が映し出されてきたエフェクトが一瞬にして消え、その中から衣装を早替えした6人が現れてサビが始まったのです。

 2ndライブでは、この演出が完全再現されました。映像は紗幕に映し出され、サビ前で振り落とされてその間に衣装の上着を脱いで6人のキャストが登場しました。特筆すべきは、この紗幕に映し出されていた過去のライブが1stライブのものだったということです。配信を通してメンバーと私たちが繋がるだけでなく、1stライブという実際のライブの場を通してキャストと私たちが繋がったという演出になっていたのです。私たちにとって、彼女たち6人も確かに蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブであり、私たちと彼女たち自身のかけがえのない思い出です。私たちはライブに足を運ぶことによっても、思い出を積み重ねられています。

 衣装の早替えに感動しないシチュエーションはないのですが、自分たちの過去、それだけでなく伝統という積み重ねられた過去の上に、姿を変えることで新しいこれからを重ねているようで、Fes×LIVEで見たときから「現地で見るまで死ねない」という気持ちを強くしていました。このブログでおわかりのように私はヒーローも好きなのですが、力のない私たちの声を必死に届け、その声が集まることで不可能が可能になる展開はもちろん好きで、その結実が現地でも見られたことに大いに満足しました。

この曲が生まれる背景にあった激突

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 さて、ここまで『Link to the FUTURE』の感想を語ってきましたが、この曲の歌詞は「ありがとう」で締められ、配信でのたくさんの人たちとの出会い、蓮ノ空での仲間や伝統との出会いに感謝しています。そこからシームレスに皆への感謝を伝える1月度Fes×LIVEの楽曲に移行しました。ここでその間の活動記録の内容 (決勝での敗北から立ち直る回) を入れてしまうと、湿っぽくなってしまうので、これが唯一の正解ではあります。注目ポイントはその流れの間に『Runway』が挟まったことです。さやかがラブライブ! への挑戦を通して成長した部分なので、据わりがよいと同時に、感謝とセットでこれからに期待を寄せて欲しいという想いを表明することにもなりました。

 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの躍進を支えたたくさんの人たちの中でも、誰よりも功績が大きいのが101期生で元部員の大賀美沙知です。『抱きしめる花びら』は、沙知への伝えるに伝えきれないほどの気持ちを届ける歌であり、同時により広く、遺されるものから去りゆくものへと伝えたい想いがある人に響く歌です。ラブライブ! シリーズでも貴重な、「自分たちが卒業しない卒業ソング」といえるでしょうか (他に『サクラバイバイ』など)。活動記録では、沙知の前で「蓮ノ大三角」こと102期生3人がこの歌をアカペラで歌い、その後にFes×LIVEでフルバージョンで披露する「二段構え」でそのことが表現されました。一度目は102期生の個人的な気持ちであり、二度目はみんなの気持ちの乗ったパフォーマンスでした。そしてライブでは、それらが融合し、アカペラで歌うシーンからフルバージョンの披露へと直接飛びました。あいにく気づきませんでしたが、歌割りもライブオリジナルのものに変えられていたという指摘もあります。その2つが重なり合うことで、最大限に気持ちが乗った状態のパフォーマンスになったと思います。客席も沙知のイメージカラー (メンバーカラーは不明ですが、劇中でもしばしば緑色で表現されています) の緑色を振っていた人が多かったです。

 私事ですが、ちょうどとある節目を迎えていた私にもこの歌は刺さりました。

 

2. 3. 癒し

 予想していたのに反し、丸ごとアンコールに持ち込まれた*1のが2月度Fes×LIVE、シャッフルユニットの内容です。みらくらぱーく! の方針を巡る慈と瑠璃乃の対立から、伝統のユニットとは異なる今回限りの3つのユニットが生まれました。

 2ndライブでの披露は、るりのとゆかいなつづりたちの『Colorfulness』から始まりました。瑠璃乃役の菅叶和さんから、「座って聴いてほしい」というアナウンスがあり、ラブライブ! シリーズでは珍しく、座ったままで2人の歌声に聴き入ることになりました。この演出については、前後もぶち上げ曲ばかりなので身体も休められて良かったとか、立った状態でステージが見づらい席なので座ると見えて良かったといった声が寄せられていました。Fes×LIVEでもファンのペンライトの色替えを待つ思いやりを見せていましたが、リアルライブでも、まさに「癒し」の曲として大成功していたと思います。世界の隅々まで「楽しい」で溢れさせるために、瑠璃乃が不可欠だと感じていたものです。

 実は、『Colorfulness』だけでなくシャッフルユニットは全て「癒し」をテーマにしています。『Pleasure Feather』も落ち着く曲ですが、「蓮ノ休日」というユニット名が示す通り、頑張る人の休日の癒しである点が、頑張れなくなった人にも寄り添う『Colorfulness』と異なります。では、『ハッピー至上主義!』はどうでしょうか? 底抜けに明るい曲調、明るくてもはや頭が悪いともいえる歌詞……。慈の「ひたすら自分の『楽しい』をぶつければ相手も楽しくなる」という持論通り、ここまではっちゃければ悩みや怒りがどうでもよくなって楽になる人は確実にいるでしょう。ただ、例えるなら体調が悪いときにスタミナ満点のラーメンを作ってくれるタイプの優しさなので、鬱陶しく思う人もいても仕方ないのは本当です。

 やり方が違うだけで三者三様に誰かのことを癒やせている、そんなパートでした。

 

3. Blooming with 103

 2ndライブの内容は、103期後半、10月度~3月度のFes×LIVEを振り返りつつ、104期の展開を垣間見せるというセットリストでした。私は、10月度Fes×LIVEで初めて応援上映に参加し、その後11月度、1月度、2月度と同じイオンシネマ*2で応援したので、その思い出とオーバーラップしていました。

 会場のステージ装飾は、モニターの両脇に金属質の丸い輪が目立ちました。これと同じものは、11月度の『ツバサ・ラ・リベルテの回でステージの後ろに1つだけありました。同曲の披露ではモニターに同じ輪が現れ、合わせてタイトルロゴと同じ「○○○」になりました。

 10月度の内容はラブライブ! 地区大会の予選曲で、これは1stの東京・愛知公演でも追加された内容ですが、それらの公演を踏まえて大きくブラッシュアップされていました。特に『KNOT』『ノンフィクションヒーローショー』は『異次元フェス』『ユニット甲子園』でも披露された勝負曲です。最高の状態で見ることが叶いました。

 MC明け1曲目が『ノンフィクションヒーローショー』でしたが、開幕でいきなり大爆発させたのは流石みらくらぱーく! だといえます。ライブのステージで花火を打ち上げるのとはわけが違う、ヒーローが名乗りを上げる爆発です*3。既に何度もこの曲の披露を見た人もいる中で、インパクト絶大だったと思います。一方で、『千変万華』は1st以来の披露でした。スリーズブーケは総じて人気の高い曲が多いためか、予選曲よりもそちらが優先されてきたのでしょうか。『水彩世界』アンサーソングでもあるため、ライブで両曲が連続したのは良かったと思います。

 この後の展開では、先に述べた通りラブライブ! 大会編や沙知卒業編が続くためユニット曲がやや少なくなるのですが、ライブではその合間合間にユニット曲を挟み、「ユニットの蓮ノ空」としての個性をアピールしていたように思います。

 本編はシャッフルユニットを飛ばして3月度の内容で一旦閉じ、後の要素はアンコールに回りました。迎えたアンコールの1曲目は、まさかの『DEEPNESS』でした。それだけでも驚きなのに、ステージ上には6人います。私が参加したのはDAY2だったので、実際には事前にこれが披露されたことは知ってしまっていましたが、DAY1当日はずっと嘘だと思っていたほどです。

 なぜ、『リンクラ』に全く登場しない曲形態がライブで披露されたのでしょうか? その鍵はモニターの映像にありました。映し出されていたのは、漫画版ラブライブ! flowers*』でした。実は、このわずか2日前に発売された『ウルトラジャンプ』の掲載号にて、6人版の『DEEPNESS』が登場していたのです。漫画の作中では、花帆の夢の中で6人になった蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブが『DEEPNESS』を歌っていました。ところが、この時点でスクールアイドルクラブのメンバーは4人。直後に『リンクラ』版同様に瑠璃乃が加入するのですが、さらに登場はしているものの休部中の慈も加わり、最強で最高の2人を迎える未来への花帆の予感が、夢となって現れたのでした。

 それは、104期生が今にも始動しようという期待に満ちた今のスクールアイドルクラブにも重なるものだったと思います。(執筆時点では104期生も配信を重ね、すっかりクラブの一員として認められている感があります)

 今回はさらに異例のことがありました。所定のセットリストとして、ダブルアンコールが前提に組まれていたのです。もちろんこれまでのダブルアンコールがあった公演でも準備はしていたと思いますが、基本的にそこまでで一度披露した曲をやる場に過ぎませんでした (Aqours 4thは楽曲なし)。今回は千穐楽公演以外でもダブルアンコールがありました。このようなことは、μ's FINALライブ以来です。

 披露されたのは『STEP UP!』です。キャストの動画コンテンツ『せーのではすのそら!』のテーマソングです。『Link to the FUTURE』の項でも触れたとおり、私たちの知る「もう1つの蓮ノ空」を象徴する楽曲です。アンコールによる場面転換を巧みに使って、媒体の違いを表現していました。

 ダブルアンコールを呼んでいる途中、客席の外枠でスタッフたちがなにやら準備をしていました。ここまでは客席の内側の通路をトロッコが通っていましたが、『STEP UP!』だけは一番外側を回ってくれました。おかげで、それまでより近くでキャストの姿を見ることができました。少し違った角度から、蓮ノ空を見られたと言うべきでしょうか。

 

4. Blooming with 101

 この後の2項は、総括的な内容となります。

 このライブを振り返って思うのは、唯一の101期生、大賀美沙知の存在がとにかく大きすぎるということです。瑠璃乃より背が低く、ラブライブ! シリーズのメインキャラの誰よりも小さいとも言われていますが、まさに一部ファンの間で小さな巨人と呼ばれるほど、沙知の存在感は大きなものです。「蓮ノ大三角」こと102期生3人をまとめた唯一の先輩であり、現役時代は3ユニットを1人で兼任。生徒会長になるために部を中退すると、今度は理事長の孫として生徒たち、そしてスクールアイドルクラブを守るために活動し、スクールアイドルのライブに適した場所として第二音楽堂を学校に残して卒業を果たしました。

 ライブにおける存在感は、セットリストにも反映されていました。一番核心に『抱きしめる花びら』があるだけでなく、1月度の内容に割り込むように『Runway』が入ってくるのも、この曲は沙知の働きかけによってさやかが披露することになった曲だからだと思います。

 ライブの終わりには、いつも終演を知らせる場内放送が流れますが、その放送を担当したのは沙知役の小原好美さんでした。小原さんはステージに立ってパフォーマンスをするキャストではありません。103期にピリオドを打つ2ndライブが (執筆時点で) 終わってしまった以上、今後もその可能性はありません。ラブライブ! シリーズにおいては、サブポジションの声優です。にもかかわらず、ライブ会場に来た私たちに声を届けてくれ、そして未来へと羽ばたくスクールアイドルクラブの後輩たちにエールさえ送っていました。なお、サブ声優の場内放送は、Aqours6thライブ <WINDY STAGE> における「はっちゃけお姉さん」ことアキバレポーター役の高森奈津美さん以来となります。この2回以外に、類似の例は知りません。

 私は、沙知の存在感はキャラクターとしてだけではないと考えています。ラブライブ! シリーズが得意とする「実在性」が、歌って踊らない沙知にも生まれたのです。まずは、メンバーたち6人 (当時) の実在性が、日々の配信やライブでキャストたちが役に徹しきったことと、それと完全に連動したストーリーの存在によって確保されました。そのストーリーの中で、メンバーたちとの関係性という形でかけがえのない存在として沙知が描き出されたことで、沙知もまた、私たちと同じ時間を生きる存在として認識されたのだと思います。実体のある声優が直接表現するというこれまでの方法とは異なるやり方、いわば「輪郭」のような形で、キャラクターに命が吹き込まれたのです。

千葉公園の蓮華亭の看板

 

5. Blooming with 104

 今回103期の物語を締めくくったのは、いうまでもなく104期の物語が既に始動しているからです。千葉公演時点では104期生はライブを行っていませんが、先行登場のような形で『Dream Believers』を披露しました。Fes×LIVE後の兵庫公演ではさらに各ユニットの伝統曲と全員の新曲 (伝統曲)『365 Days』も披露されました。

 私たちは、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの「目に見える変化」を目撃したのです。変わらないものなどないということは、頭ではわかっています。例えばAqoursのように長年やっているグループであれば、キャストも成長していれば、楽曲も演まれがコンテンツ化されています。しかし、ライブ会場に行けばまた何も変わらずに9人に会えるということが、心のどこかでは当然に感じているような気がします。それが、この『Dream Believers』を聴いただけで、前向きな意味で破壊されました。同じ曲でありながら、違う色が付いていることは明白だからです。「実質新曲」であるユニットの伝統曲と比べても、少なくとも私にとってはその効果は大きかったような気がします。

 余談ですが、2番の「Dream Believers You believe!」のあとの歌唱が、103期では「夕霧」綴理*4だったところ、104期では姫芽にバトンタッチしていました。

 数が好きな綴理にとっても「良い数」であり、そして何よりμ'sにずっと憧れてきた梢にとっても間違いなく、レジェンドナンバーである「9人」という数には言い尽くせない思い入れがあると思います。

 タイトルロゴの3つの○を通して「過去」「現在」「未来」を見通したライブでした。9人の物語、そしてユニットごとの3人の描く未来は、どんなものになるのでしょうか?

*1:兵庫公演では全カット

*2:ちなみに、イオングループの本拠地もまた幕張

*3:『にじよん あにめーしょん2』ではミニアニメで3回も爆発シーンをやった

*4:なんつって……